墨付けの大原則


家って、外から見ると窓やら外壁やら庇やらがついているため、とても複雑に計算されて造られたシロモノなのだろうと思ってしまいます。

大工さんたちが、大量の木材に墨付けをし、その墨のとおりに切ったり削ったり(いわゆる「刻み」)して、組み合わせるとぴったり計算どおりに納まる。

  すげー! なんで狂いもせずにぴたり納まるんだろう。 しかも、木材というのは反れたり曲がったりしているものもあるのに・・・


家というものが、日曜大工のレベルから見ると非常に大きくて複雑なものだから、施工したときにすべての材料がきちんと隙間無く組み合わせるということが、素人にとっては至難の業ではないだろうか?
 ・・・と思ってしうまうのは私だけではないと思います。

でも、実際やってみたらうまくいきました。
それには訳があります。

まず、窓やら外壁やらは、骨組みである「軸組み」に後から肉付けされたものであって、骨組みそのものはシンプルなものです。
さらに、その骨組み(軸組み)は、ある「基本線」にそって組み立てられています。

「基本線」は、すごくシンプルです。

幼児が家の絵を書くと、四角の上に三角をのせたようなものを書きますね。 一筆書きでもそういうのがありましたね。 あれと同じです。

木造建物の基本線では幼児の描く四角の上に三角が乗った家を想定してみますが、この場合、三角形の底辺は、その下の四角の上の辺と同じ長さです。

つまり、基本線の家には「軒」がないのです。

下から順に、四角形の下の辺は「土台の上端」です。

四角形の側面の辺は「柱芯」つまり、柱の中心です。

四角形の上の辺=三角形の底辺は「峠墨」と呼ばれる基本線です。

そして三角形の斜辺は「屋根勾配線」と呼ばれ「タルキの下端」を表します。

たったこれだけです。


この基本線に、柱や土台・柱・梁・タルキなどを当てはめてみると下のイラストのようになります。 さらに、わかりやすいような、適当な寸法を入れてみます・

木造建物基本線と、寸法管理の例

このイラストの例では梁の太さ(高さ)は270ミリにしているけど、随分曲がっていますよね。
(昔は曲がりのある松材などが梁に使われることが多かったけど、その場合、ムクリ・・・つまり曲がっているほうを上にして使うのが強度的に有利)

このような曲がった材料でも、寸法管理の基準となる真っ直ぐな基本線(この場合は峠墨) の墨を打ち、柱や束が取り付く場所ごとに、墨から材木の際までの距離を測って足し算引き算すれば、正確に柱や束の長さを割り出すことができるというわけです。


上記のことがあるため、家全体の構造材を墨付け・刻み加工するときは、まず梁や桁などの横に使う部材から始め、これらに打った墨線からの情報をもとに、柱や束などを刻んでいきます。 順番があるのです。

ちなみに、梁・桁・土台などの、横に使う部材のことを「横架材(おうかざい)」といいます。

高さ関係だけでなく、水平方向の長さについても、この墨付け原則のとおりです。

例えばイラストのような仕口を作るときでも、♀材の欠き込みは「材木の端から何ミリ掘るか」 ではなく、「中心線から何ミリ離れたところまで掘るか」 というふうに決めれば、♀の材料の太さや曲がりに関係なく♂材の長さを一定にできます。

もちろん、設計の基本寸法は材木の中心線中心線までの距離で決まっているわけです。


左のように「材木の端から何ミリ」 とやると誤差が出てしまうが、

右のように「中心線から何ミリ」 とやるのが正解


柱の場合は、実際には基本線なんて中心にある訳だから打てませんし打ちません。
そういう例外もあるけれど基本的な考え方はこういうことなのです。

寸法の管理は材木の端からやるのではなく、墨打ちした中心線でやるのが原則。
このように 墨付けすれば建物全体の基準の寸法がブレないので、全体が歪むことはないというわけです。

この原則を使えば、ツーバイフォー材のような規格材だけでなく、理論上はどんな材料、例えば大きく曲がった古材や廃材のようなものを使ってもうまく納めることが出来るし、うまくやれば、素人の墨付け・刻みでも、組んだときにはぴたりと納まりますよ (^^)v