在来工法はセルフビルドに向かない?

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一般に在来工法と呼ばれるのは木造軸組み工法のことで、柱や梁などで家の構造を形作るもの。つまり昔からある一番一般的な工法です。
それなのに在来工法は、素人がセルフビルドで建てるには向いていないと思われているようですね。

一番身近な工法であるにもかかわらず、日本の木造建築技術は長い歴史の中で複雑に発達し、専門職である大工が施工を行うのが当たり前になっているため、一般の人が家の構造部分に親しむ機会がほとんどなくなってしまっているのが現状なので、無理もないかな~


むしろセルフビルドというとログハウス、またはツーバイフォー工法というイメージが強くて、セルフビルドに最も適した工法はログハウスかツーバイフォー工法であるという思い込みが世の中で一般的になってしまっているのでは?
ログハウスはキットを販売する会社も多いし、そのことからも一番人気があるのかもしれないですね。 でも一番人気のある工法がセルフビルドに一番適しているのか?
この辺は、私は常々疑問に思っているところです。

ツーバイフォー工法との比較

ログハウスはかなり個性的なのでこの際考えないことにして、ツーバイフォー工法(2×4工法)と比較してみましょう。
木造住宅で在来工法と呼ばれているものは柱や梁などの軸で構造を支えるもので、昔からある一般的な工法。
これに対して北米生まれのツーバイフォー工法は、SPFと呼ばれる外材に合板を釘で打ちつけ、面で構造を支えるものです。
セルフビルドの観点から両者の特徴を比較した文章はあちこちで目にすることができるが、要約すると大体こんな感じで紹介されています。

在来工法は、

1 使用する木材の樹種や寸法の種類がとても多くて、適材適所にうまく用いるのは経験と知識が必要
2 複雑な継ぎ手・仕口を刻むため、熟練の技が必要
3 軸組みをつくったら、屋根まで一気に施工しないといけない
4 同じ設計図でも10人の大工がいれば10通りの家ができるほど、出来は大工の経験や技量に左右されやすい

それに対してツーバイフォー工法は、

1 使用する木材は2×4、2×6、2×10など数種類のみで、樹種もほぼ同じ
2 在来工法のように木材のクセや曲がり、使用する向きなどに気を使う必要はない
3 複雑な継ぎ手・仕口を刻む必要はなく、接合はすべて釘と金物のみ。だから熟練の技を必要とせず、施工する人の技量による差が出にくい
4 1階床が出来たら1階壁をつくり、2階床が出来たら2階壁をつくり……というふうに、下から順に建てていくので、時間のある都度施工できる
5 作り方が分かりやすく、マニュアルがしっかりしている

  ……よって、ツーバイフォー工法のほうが素人のセルフビルドに向いている。


うーん、これは一見説得力がありそうな感じ。
知らない人が読めば、「フーンそうか。じゃあ、在来工法はセルフビルドにはふさわしくないなあ」 と納得してしまいそう。
でもこれには誤解や思い込みがあると思います。 私自身が在来工法で建てたから贔屓目に見るということもあるけれど、総合的に考えて日本国内で建てるなら、在来工法が実は一番セルフビルドに向いていると思うのですよ。


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在来工法にも良いことはたくさんある

情報量が豊富

在来工法は何よりも、大昔から日本にある工法であるため当然情報量は圧倒的に多いです。本屋にいけば在来工法に関する本はたくさんあるので、どれを買って読んだらいいか迷うほど。
知り合いに大工さんがいれば、在来工法のことは当然知っているので、分からないことがあったら聞くこともできる。実際に家を作っている職人さんのアドバイスは何よりの情報源です。
 ◇ 関連ページ ⇒ セルフビルドのお勧め参考書

材料入手が容易

在来工法で使う木材は、日本中ほとんどの製材所や木材店で扱っているため、どこでも買えます。
電話1本で現場まで納入してくれるからこちらで運搬する必要はないし、材料を少しずつ購入して足りなくなったら気軽にいつでも買い足すことができます。

木材以外にも、建築金物や断熱材などの建材は、在来工法向けに開発されたものが数多く出回り、最近は大きなホームセンターでもこれらの材料を扱っています。
 ◇ 関連ページ ⇒ 材木店から木材を買うには?

使う木材の種類は、言うほど多くはない

「使用する木材の樹種や寸法の種類がとても多くて、適材適所にうまく用いるのは経験と知識が必要」 と言われるけど、それは程度の問題であり、立派な床の間を作ったり銘木を随所に用いたデラックスな家でもない限りそれほど多くの種類の木材を扱うわけではないのです。

逆にいえばどこにどんな木材を使うか、種類を多くするか少なくするかも全く自由で選択肢が多いということ。
安さ重視で建てるなら、ほとんどを安いスギの並材で作ることもできるわけです。
 ◇ 関連ページ ⇒ 材木の種類や寸法について

製材された材木がどっちの方向に曲がろうとするかとか、どういう向きに使えば荷重により耐えられるかといったこと、つまり適材適所にうまく用いるのは、住宅程度のものであれば基本的な法則を覚えてしまえば特に難しいことでもないです。
五重の塔を造るような凄い技がなければ2階建ての民家も造れないかというと、そうではないはず。
 ◇ 関連ページ ⇒ 墨付けの大原則

「熟練の技」はなくても出来る

「継ぎ手・仕口を刻むためには、熟練の技が必要」と言うけど、これも程度問題。
確かに仕口や継ぎ手の種類はたくさんあるし、中には複雑過ぎて名人芸がないと出来そうもないものもあるけど、実際に一般住宅に使われる仕口・継ぎ手の種類は少ないし、シンプルな構造なら、ほんの数種類の簡単なものだけで組むことが出来ます。
つまりピンキリなのです。まあ、このことからもセルフビルドの家はシンプルな形状がお勧め。

ほぞ穴だって、カクノミという工具があれば誰でも簡単に正確にあけられるし、「腰掛け鎌継ぎ」のような、一見すると複雑そうに見える継手でも、やり方を覚えて少し慣れれば、正確な加工はできるんです。
 ◇ 関連ページ ⇒ 木材の刻み  さしがねの使い方  筋交いの入れ方

在来工法が素人向けではない・・・ という論調を耳にするとき、一番よく言われるのが、この「仕口・継手」の刻み加工が素人では難しいという点ですね。
しかし、もし自信がない、あるいは時間がないならプレカットに頼めばいいし、今はむしろ本職が時間節約のためにほとんどがプレカット利用になっています。

 ※ プレカットとは、構造材の仕口、継手を精度よく機械加工して届けてくれるサービスです。

セルフビルドの個人でも、プレカットを利用すればこの部分の作業を省略できるし、精度の高い、耐震性お墨付きの構造体を用意できるわけです。必要な金物だってプレカット会社で用意してくれるから楽ちん♪
平面図さえあれば、簡単な打ち合わせの後、プレカット会社がきっちり取り揃えてくれます。いわば、在来工法の「キット」を作ってくれるわけですね。こちらであまり難しいことを考えなくてもいいようになっているのです。
 ◇ 関連ページ ⇒ 個人でプレカットを利用する

構造部分さえ出来れば、内装などはツーバイフォーだろうが在来工法だろうがそんなに変わりないので、好きに家作りを楽しめばよいでしょう。

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雨の多い日本では合理的な建て方だ

在来工法では、コンクリートの基礎が出来た後しばらく現場には何もなく、ある日突然棟上げがはじまって通常1日~2日で一気に上げちゃいます。
その後屋根の下地(ルーフィング)が貼られて雨に濡れる心配がなくなるまでは、セルフビルドでも数日あれば可能。
その後は自分の空いた時間を利用してのんびり施工できます。

在来工法で建築中の建物(屋根がかかった状態を下から見る)
屋根さえ掛かればこっちのもの(^o^)┘


逆に、ツーバイフォー工法やログハウスは下から順に積み上げてゆくやり方なので、セルフビルドでは屋根を葺き終えるまでに相当な期間がかかります。
床には断熱材を敷きこむけど、もしもそれがグラスウールであれば一旦濡れたら性能が激減するので濡らせない。断熱材でなくても、床合板は、プロ施工の現場でも雨に直接打たれているところをよく見かけます。

プロ施工の現場ではかなり早く屋根まで出来るので関係ないけど、セルフビルドだと長期間かかるので、屋根がかかるまでの期間、構造体を雨から守るためには、一日の作業が終わる都度、巨大な家全体をシートで覆うという大変な労力を強いられるでしょう。
シートを掛けるための仮設屋根の骨組みなども必要になるわけだし、雨の多い日本では台風との戦いもあり、強風でシートが飛ばされないか気が気ではないでしょう。

在来工法なら、最初に屋根ができてしまうから現場の管理にあまり気を使わなくていいです。
私のように転勤や積雪で何ヶ月も現場に顔を出せなくなっても心配ないし、建築中はよく、屋根だけあって壁のないスカスカの現場(2階)にテントを張って寝泊りし、友人を呼んで宴会していました。そういう楽しみかたも出来ます。

「自分の都合にあわせて時間のある都度施工できる」 というのは、むしろ在来工法の方なんです。

今の在来工法は耐震性も高い

ツーバイフォー工法の家は確かに耐震性は高いようです。その点は素晴らしいですね。
かつては大地震が来れば、大きな被害を出すのがたいてい古い基準で建てられた在来工法の家だったので、在来工法は耐震性が低いと思われてもしようがないというイメージですが、
今現在は、平成12年や平成19年の法改正を経て、在来工法も随分と耐震性がアップしているようです。接合部分の金物の使用基準もしっかり細かく規定されています。
 ◇ 関連ページ ⇒ 基準どおりに家を作るための必読書

壁についても、従来の筋交いだけでなく構造用合板と併用している例が多くなり、こうなるともうツーバイフォー工法との境がだんだん無くなりつつあるように感じます。
互いの工法の良い点を見習って進化していくのは素晴らしいですね。
 ◇ 関連ページ ⇒ 在来工法の耐力壁を、筋交いではなく構造用合板で作る

自由度が高い

在来工法は軸組みで構造を固めたら、あとはそこに窓や外壁をペタペタと肉付けしていくようなイメージなので、例えば床や天井の作り方などもたくさん選択肢があってどのように作ってもいいし、開口部のサイズはどうにでもできるし変更もしやすい。
私の自宅建築でも、いったん入れた窓を取り外して別なところに移動したこともあります。

また、天井裏スペースも自由に設定できるので配線工事が楽ですね。 ツーバイフォー工法のようにたくさんの床根太に配線を通すための穴をあけるということは必要ありません。

素人が最初から全工程を見通して完璧な設計図を描くことは難しいので、途中で気が変わったら変更に対応しやすい在来工法は、その点の気楽さもありがたいところです。

家本体は一種の「箱」ですが、実際に住むとなると「箱」以外にも、屋根だけあって壁のない「下屋」が欲しくなることはよくあります。
特に農家さんは、農機具やさまざまな資材を収納してある、このような場所が必ずといっていいほどありますね。
農家でなくとも、「半分外」で屋根がついている空間は非常に重宝なのですが、在来工法の技術が身についていると、このような空間を便利に作ることができますよ。 「壁」で構造を支えるツーバイフィー工法の技術だけでは賄えないものも作れる・・・選択肢が大きくなると思います。

また、今は在来工法でも筋交いではなく、あるいは筋交いと併用して構造用合板で耐力壁を作ることが一般化していますが、壁量計算をクリアしていれば合板を使わずに筋交い(と火打ち梁)で耐力壁(床)を構成し、無垢材だけで作ることもできるため、接着剤の化学物質を特に嫌う場合は、合板抜きで作ることも可能になります。

どうでしょう?
人それぞれでデザインの好みや求めるライフスタイルなどがすべて違うので、単純にどの工法が優れているということは出来ないけど、在来工法にも良い点がたくさんあることを感じていただけたでしょうか。

ツーバイフォー工法のように釘の打ち方ひとつまで細かくマニュアル化されているから誰が作っても同じものが出来るというのと、在来工法のように同じ間取りでも10人いれば10通りの家が出来るのとでは、もうこれはどちらが優れているとかいう話ではなく好みの問題だと思います。
私(自由気ままを好むキリギリス的な人間)は、在来工法のほうが性に合っているなぁ~

 ※ 最近は在来工法も細かくマニュアル化が進んできていますが・・・(^^ゞ

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