素人が、延べ床面積100㎡以上の大きな家をつくるには?
建築士の資格を持たない素人が設計できる木造建物は、延べ床面積で100平方メートルまでと決められています。
100平方メートルというと、坪に直せば30坪
まあまあの面積ですが、もう少し広さが欲しい気もするな・・という微妙な面積ですね。
これ以上大きな家をつくりたい場合は、建築士の資格を持たない我々は建築士に設計を依頼しなければならないというわけです。
でも、私は建築士の資格がないけど、結局30坪を超える家を作ってしまいました。そのカラクリをお話します。
注 意 !
このページは平成17年に作成したものですが、その後平成19年6月に建築基準法が改正(改悪?)されたため、このページに書いてあることは全く古い情報となってしまいました。
今ではあくまで 「お話」 程度にしかなりませんので、そのつもりでご笑覧ください。
また、素人でも設計できる範囲は、都道府県などが独自に条例で、法律より厳しい規制をかけていることがあります。 実際に設計をはじめるなら、まずは市町村役場に問い合わせを!
以前、北海道をクルマで旅行したときのことです。
お昼をとうに過ぎてお腹もすいた頃、道端にログハウスの軽食喫茶があったので立ち寄りました。
一見して、「これは業者の建てたログハウスではないな、これはおそらく店のご主人が自分でつくったものに違いない・・・」
そう思えるものだったのです。
遅い時間だったこともあり店内の客は我々だけでした。
食事をしながら店のマスターにさりげなく聞いてみます。「このログハウスは少し変わってますね。もしかして手作りですか?」
マスターは「よくぞ聞いてくれた!」という感じで 「そうなんですよ!」
その後はセルフビルドの話で盛り上がったのはいうまでもないんですが、話が建築確認申請のことになったらマスターは意外なことを言うのです。
「建築確認なんて受けてないよ。別にいいみたいですよ・・」
「えーっ、そうですか? 役所の人から何か言われませんか? 国道沿いで目立つ場所にあるのに。」
「もう建てて何年もたつけど何も言われたことないですね。工事も10年かけてコツコツやってたから皆に見られていたはずだけど。
役所の人もしょっちゅうここで食事していきますよ。建築課の人かどうかは分からないけど・・・」
(@_@)
いいなあ~ 北海道って、おおらかで!
ちなみにこの場所は、北海道の中でも特に人口密度の低い「東部」のほうでした・・・
さて私の場合はというと、本当は30坪を超える大きな家をつくりたかったのですが、建築士の資格を持っていないし、セルフビルドで自宅をつくるのに他人に設計を依頼するのも嫌だったので、建築確認申請を出すときは30坪以下にしました。
2階に大きな吹き抜けをつくり面積をギリギリ100平方メートル以下に抑えたのです。
実際は、2階に大きな吹き抜けをつくるなんていう勿体無いことはしたくないので、建築している最中に勉強して2級建築士の資格を取り、後日自分で変更申請をしようという魂胆だったのです
(^^ゞ
ところが2級建築士の資格をとるには7年以上の実務経験を積むか、建築関係の学校をでていることが必要なのです。そういうこともよく調べないで立てた作戦はもろくも失敗しましたが、でもやっぱり30坪以上の家にしたい。
このまま何の手続きもしないで完成させてしまおうかな・・・
北海道でみたログハウスの例もあるし、別にどおってことないんじゃないの~
・・・思わず、良からぬ考えが脳裏をよぎります。
個人で家を建てる場合を想定して、法的にはどんな手続きが必要かというと、まず建築確認申請書を役所に提出します。
建てる場所にもよりますが普通は延べ床面積が10平方メートルを超える場合、つまり6畳を超える場合は申請が必要になります。(申請不要は、既存の建物に付随する小屋等で「増築」扱いの場合です。 全くの新築だと申請が必要)
都市計画区域外であれば木造なら500平方メートルまでは要らないとか、いろいろあるようですが、私の県のように独自の規制で、都市計画区域外であろうとすべて確認申請が必要と決めているところもあるので、役所の建築担当課にいって確認するのが一番です。
住んでいる地区によって違うかもしれませんが、申請書は市町村役場の担当課に提出します。
自分で持っていけばいいのです。
私の住んでいる地区では村役場の都市計画課が窓口です。 申請書は正副2部提出します。
窓口で簡単なチェックを受けると、農業委員会、農林課、環境課に行ってチェックを受けてきて下さいと言われ、副本を持って回ります。
農業委員会では農地ではないかどうか聞かれ、農林課では農業振興地域や森林計画対象地域との関係を職員が調べた後、地目や現況の状態を聞かれ、環境課では排水処理方法などについて聞かれました。
いずれも簡単に終わり、それぞれの課でハンコをもらった後都市計画課に戻ります。
役場ではこの後、消防にもチェックを通した後、県の担当課に書類を回して県で審査することになります。
問題なければ普通の木造住宅なら7日程度で確認通知が来るので、それで一段落。
その後工事を進め、申請図面どおりにきちんと作ってあれば何も問題ないわけです。
手続きとすれば、工事が完了したら工事完了届けを提出し、県の担当職員の検査を受け、数日後に検査済証が送られてきて一件落着です。
メデタシメデタシ おめでとう!!
友人からよく聞かれたのは「中間検査はないの?」ということでしたが、無いです。
中間検査は住宅金融公庫の融資を受けて建てる一般住宅の場合の話ではないでしょうか。
融資もなく、自力でたっぷり時間をかけてコツコツつくっていくセルフビルドは、第三者の検査を受ける煩わしさはない代わりに、すべて自己責任の世界です。
申請図面のとおりにきちんと作らなかった場合
私のように、作っているうちに延べ床面積が100平方メートルを超えてしまった! 120平方メートル以上になっちゃった! という場合、
もはや素人が自分で設計・申請出来る範囲ではなく、このままでは限りなく違法の世界へ足を突っ込んでいきます。
北海道のログハウス方式でいくか・・・と何度か考えたものの、正直者の私は正しく手続きすることにしました。(^^ゞ
それはつまり、建築士に変更設計を依頼し、建築士に変更申請をしてもらうことです。
最初に申請した内容を変更したくなったら計画変更確認申請書を出すということが出来ます。
たまたま換気設備を購入しようとしていた先の方を通じて一級建築士事務所を紹介してもらい、その方にお願いしました。
しかし、変更設計の図面は自分で書きました。
とはいっても、いわゆる「名前を借りるだけ」というのではありません。
自分が書いた図面を一級建築士にチェックしてもらい、まずいところがあれば加筆修正してもらい、それで申請してもらいます。
「設計者」は当然一級建築士になりますので、役所を通すことができました。
図面を一から書いてもらうわけではないので、詳しくは教えられませんが数万円ですみました。
たまたま私のような家づくりに興味を持ってくれた一級建築士だったので、非常に良い関係で気持ちよく仕事の依頼ができました。
私のほうも最後まで自分で図面を書いたという満足感も得られ、プロのチェックもいただき、100平方メートル以上の家をつくれて大満足です。
建築士の方に仕事を依頼するにしても、図面を一から書いてもらうという方法だけでなく、双方が納得しさえすればいろんなやり方ができるんだなあと感じた次第でした。
資格を持たない個人が自分で家をつくるという夢を実現するにあたって、延べ床面積100平方メートルの壁を破る手段はちゃんとありそうですよ。