DIY日曜大工で家をつくる
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セルフビルド体験記
第1話

セルフビルドの基礎工事  セルフビルドの木造軸組み セルフビルドの屋根工事 
最終更新日 2023年11月5日

ホームページ管理人の、自分で家を建てた体験談です。

私は建築の仕事にはシロートでしたが、夢をかなえようと、自分で家を建てることを思いつきました。
さて、実際にはじめてみると、いろいろな困難や壁が・・・

でも協力者が現れたり、珍しい経験ができたりと、楽しくエキサイティングな日々でもありました。その雰囲気が伝われば幸いです。


書いた人 ・ 運営者

氏家誠悟(seigo uziie)
2004年からこのサイトを運営している個人です。自分で家2棟、小屋2棟をセルフビルドしました。「自分でわが家を作る本。」の著者です。


第1話 ~ 土地購入から設計まで

1、土地購入


平成6年春5月、36歳の地方公務員(岩手県職員)だった私は岩手県の北の端、海に面した小さな町の地方事務所に勤め、妻と3匹の猫とともに借家暮らしをしていた。

いつかは自分の家を持ちたい・・と思っていたが、土地もない。

けれども、土地のないサラリーマンが普通やるように、どこかの整備された住宅団地の一角を購入して住もうという気にはなれなかった。

なぜか?

まず、住宅専用の団地だと値段が高い!

周りがあまりにも整備され過ぎていて、野生的な面白みがない。

はい、きれいに整備しておきましたよ、ここに住みなさい・・・
その代わり毎日きちんと働いて、お金を納めてね・・・
とでも言われているみたいだ。

周囲の景色は、人の家の屋根や壁や塀ばかりで、聞こえてくる鳥の声も、カラスが主役になりそうだ。


だから、本当は私は「山」を買いたかった。

僻地の山なら、1haで100万円以下なんてこともザラにあると聞いたことがある。

1haといえば3千坪だ!

ほとんどが傾斜地だとしても、少しは平らな部分があるだろうし、
そこを平らに均し、最寄の公道からそこまで道をつくればいいじゃないか・・・

私は大学で林業を勉強したため、山や木についてはある程度なじみがあった。

山に道をつくる方法も知っていた。

山登りも大好きで、山の中に住むことに全然抵抗感はなかった。

山に住めば、窓から見える景色は四季折々の周りの自然。

野鳥の声も聞こえるだろう。騒音もない。

うまくすれば遠くの街の夜景なんか見えるかもしれない。

なんてワクワクなんだ・・・

しかし現実は・・・


広大な岩手県では、ただでさえ通勤が大変なのに、山なんかに住めば、通勤できなくなるだろう。

冬は雪が積もる。山に除雪車は来ない。 陸の孤島化してしまう。

妻は運転免許もないし、山はきらいで街が好きだ。

やっぱり無理か・・・



現実的には、県庁所在地の盛岡市に近く、土地の値段が安くて、それほど山奥でもないが、周囲に自然がいっぱい、というところがあればいいんだけどな。

そう思っていた。

そう思っていたところに、土地分譲のチラシが舞い込んだ。

場所は、岩手県の県都、盛岡市の郊外。

土地の単価は坪あたり4万6千円

完全な平地ではなさそうだ。やや傾斜している。

周囲はスギやカラマツの林

うーん、これはいいかもしれない・・・


ゴールデンウィークを利用して二人で現地に出かけた。

案内の旗を目印に進むと、最後の人家を過ぎてもなお、山の方にはいってゆく。

道は舗装が途切れ、砂利道となる。

砂利道の林道を進むこと約300m、林の中にポッカリと宅地開発された分譲地が現れた。

小雨模様の中、数人の客がゆっくりと歩き回っている。

周囲の風景に不似合いな万国旗やのぼり旗が、雨に濡れて垂れ下がっている。何となく滑稽だ。


「思ったより山の中だな」と思いつつ、私はこの、自然に囲まれた一角が気に入った。

山の中とはいえ、盛岡市中心部まで車で20分ほどだ。

車で10分も走れば、大きなショッピングセンターもある。

土地代も手ごろだ。60坪買って300万円にもならない。

それに、ここは都市計画区域外だから、家をたてるのに面倒な規制はないはずだ。

都市計画区域外であれば建築確認申請は要らないと、本に書いてあったな。

しめしめ。建築士でもない自分が建築確認申請書をつくるのは大変そうだから好都合だ。」などと考えた。


問題は、妻が土地購入に同意するかどうかだ。

田舎者ほど都会にあこがれる傾向があるが、わが妻も「街が好き、便利なのがいい、山奥なんてとんでもない!」という性質なので、難しいところだ。

周りではさっきからしきりに野鳥が鳴いている。

妻の方をチラッと見た。

小鳥のさえずりに感動している様子だ。まんざらでもなさそうだ。

気が変わらない今のうちだ!

「ハイジ」に出てくる「ピッチー」みたいだな。私が言った。

「うん、うん」

「ここ、買うか。」

「いいかも。いいかもー。」


・・・これで運命が決まってしまった。 ほとんど衝動買いだ。(^_^;


私はそれまで、不動産取引など全然経験がなかった。

あたりまえだ。普通のサラリーマンにとって不動産の売買なんてそうめったにあるわけじゃない。

当時の私が不動産業に抱いていたイメージは、

「土地ころがし」「地上げ」などという言葉がテレビで頻繁に聞かれ、「悪徳業者がいる。気をつけないと騙される。」

「なけなしの大金を払うんだ。しっかりやらないといけない。騙されてたまるか!」といったものだった。
(不動産業の方、ゴメンナサイ)


気合を入れて、不動産業者とやりとりした。

係の人にいろいろ聞いてわかったことは、

ここは、以前カラマツ林だったところを開発したもので、現状の地目は山林である。

都市計画の区域外で、市街化調整区域ではない。建物は自由に建てられる。

飲用水は、この分譲地の一角に井戸が掘ってあり、地下水を汲み上げる水道ポンプを設置していて、各敷地に配管してある。
(私が買った土地には水道の蛇口が一本立ち上がっていた。)

下水は、公共下水道はないので、各自、浄化槽を設置するか、それがいやなら雑排水を浸透枡で地下浸透、トイレは汲み取りということになる。

電気は今は来ていないが(周囲に電柱はなかった)、家を建てるとなれば、東北電力に言えば引いてもらえる、・・・といったことだった。


私は、北側の沢に面した、この分譲地の中では一番日当たりの良い一角の60坪を購入した。
(現在は、隣接地を買い増しして210坪になっている。)

このとき、井戸ポンプの維持管理はどうなっているのか、土地はどのあたりが切り土で、どのあたりが盛り土なのか、などを問いただすことまで気がつかなかった。

これで、後々、苦労させられることになるが、そのときの気分はもう「地主」だった。

これからつくる夢の我が家のことで頭がいっぱいだったのだ。

2、工法決定


自分の土地が手に入った。(^o^)

あの場所に住むとなれば車を運転できることが必須条件になるだろう。

妻はせっせと自動車学校に通い始めた。

以前はあれほど、運転免許なんかいらないと言っていたのに・・・

具体的な夢の形が見えてくると、人は俄然、積極的になるものだ。


私は妻に、「家は自分でつくる。」と言っておいた。

妻は「ふーん。まっ、いいけど。でも、本当に出来るの?」

「まあ、なんとかなるんじゃないかな。3年くらいかかると思うけど。」

「えっ、3年も待ちきれない。できるだけ早く!」


・・という程度の反応だった。


建築なんてものに私以上に全く無知である妻は、自分でつくるということが、どういうことなのか、さっぱりイメージがわかなかったのだろう。

これは私にとって好都合だった。

下手に知識があると、「えーっ!そんな大変なこと。できるわけない。素人が。もし失敗したらどうすんの。私は反対よ!」なんてことになりかねない。


買った土地は都市計画の区域外だったので、建築確認申請はいらないと思っていたら、そうではないことがわかった。

建築基準法では、都市計画の区域外ならばいらないはずなのに、岩手県が独自に、県内全域を、確認申請が必要な地域と定めていたのだ!

岩手県内ならばどんな山奥でも、10平米(約6畳)以上の建物を建てる場合には、役所に確認申請書を出して許可を受けなければならないというわけだ。

私は、漠然とドームハウスを建てたいと思っていたのに・・

ドームハウスは建築確認申請をしても許可されることがないから、都市計画区域外でしか建てられない、というのが私の認識だった。

これでドームハウスの案はなくなった。


では工法をどうするか?

ログハウスか? いやいや、ログハウスはいかにも、「素人ならばログハウスを」というイメージがあり、流行に乗るようで気に入らない。

それに昨今雑誌で目にするログハウスは、プロのメーカーが建てる豪華なものが多くて、お金持ちの道楽の匂いがしていやだ。

第一、クレーンなんか持っていないから、大きな重い丸太を一人で積み上げるのは難しかろう。



では2×4(ツーバイフォー工法)か。

北米生まれのこの工法は、輸入材である2×4材に合板を釘で打ちつけて、面を組み立てていくもので、柱や梁・桁などの軸でささえるのではなく、壁などの面でささえるものだ。

日本古来の仕口や継ぎ手といった難しい組み手を必要とせず、極端に言えば釘さえ打てればできるという、素人にも比較的取り組みやすい工法だと言われている。

じゃあ、これが一番いいではないか。

いや・・・どうもその気になれない。

どうして2×4工法は嫌なのか。


2×4材をはじめ、2×6や2×10といった部材は、外国でつくられる材料だから、そこいらへんの製材所では売っていない。

(今でこそ、ホームセンターに行けば「ツーバイ材」ということで12尺の2×4材や2×6材までも見かけるようになりましたが、私が家を建てはじめた当時は普通に売られている材料は長さ6尺(1.82m)どまりで、到底建築構造材にはなり得ませんでした。)

材料は、業者を通じて外国から輸入しないといけない。

それは面倒くさい。


本によれば、2×4工法では設計変更に対応しにくいとか、大きな開口部がつけにくいとかの制約がありそうだったし、釘を打つピッチや、釘の打ち方まで細かくマニュアル化されているという。

造り始める前に、細かなところまでキッチリ設計しておかなければならず、施工途中で気が変わったからといって容易に変更できそうもない。

マニュアル化が進んでいて、そのとおりに造れば簡単だというのは、ある意味、やりやすいかも知れないが、個人的にそういうのは好きになれなかった。


私の好みからして、自由奔放好きなようにつくり、気が向いたらどんどん変更できて、材料もどこからでも手に入れられる在来工法(木造軸組み工法)が一番いいように思う。

せっかく日本の気候風土に合っていて伝統も信頼もあり、先人たちの知恵が凝縮されている工法がこの日本にあるのに、なんでわざわざアメリカの工法を採用しなければならないんだ?

2×4工法はアメリカの工法じゃろうが・・

材料もすべて合板と外国の木だし・・そんなものばかりで日本中の家が出来てしまったら、日本の山の木は全然使われず、山は荒れ放題になってしまうではないか。

仮にどんなに優れていて合理的な工法だと言われても、2×4工法で日本で百年以上前から建っている建物なんてあるのかな?

法隆寺は千年以上もちゃんと建っているじゃないか。

どう考えても、在来工法の方が技術的に上だと思う。

それを採用しないで2×4工法に走るのは一種の親不孝みたいな気分だ。


日本とは気象条件や考え方も違う北米の工法で、システマチックに合理的に、釘を合板にガンガン打ってつくるよりも、
千年以上も前からこの国で培われてきた技術をもとにつくられる在来工法の方が理屈抜きでいいように思えたのだ。

しかも、在来工法なら材料は近くの製材所からすぐに買うことができるし、もし大工さんに知り合いができれば、いろいろ聞くことができる。


但し、在来工法は、柱や梁などの接合部に用いる「継ぎ手」や「仕口」を加工したり、木材の癖を見て使い勝手を考えるなど、熟練の技能が必要だといわれている。

おそらく、手作りで家をつくろうとする人の多くが在来工法を採用しない理由はこの辺にありそうだ。

しかし私は、本当にそうだろうかと感じていた。

そりゃあ、素人ではすぐにはうまくできないとは思うが、人がつくるものだから、何度か練習すれば自分にだってできるんじゃないか・・

それに、実際に木を刻んでみたかった。

ノミを使って木を刻む感触は楽しそうだ。

なんかワクワクする。


というわけで、工法は「木造軸組み工法」即ち在来工法に決定!


それからしばらくして、近所で大きな家が建ち始めたので、妻と見学に行った。

見学会があったわけでなく、大工さんたちが休みで現場に誰もいない日曜日にこっそり中の様子を見に行ったのだ。

私が見たいのは、部屋の間取りなどではなく、当然、構造的な部分だ。



梁の継ぎ手が見える。「台持ち継ぎ」だ。

土台の継ぎ手は「追っかけ大せん継ぎ」という難しそうな継ぎ手だ。

土台には、後で間柱を入れるための角穴が無数にあけられている。



非常に大きな家だったこともあり、自分でこんなものを造れるのかと思うと頭がクラクラしてきた。

「本当にこんなものを造れるの?」と妻が聞く。

ウッ・・・と、さすがに一瞬言葉に詰まった。

「まっ、やるのさ。なんでも、やれば出来るものよ。」といつもの強気発言で妻の不安を吹き飛ばす。


・・・かえって不安が増幅されたかも(^_^;

後日談


その後、プレカットに頼むこともなく、自分で実際に刻みをやってみた結果、きっちりと軸組みが出来上がりました。

緩んでいるところもなく、寸法違いもありません。

原則に従って墨付け・刻みをしていけば、難しそうに見える軸組みの加工も、決してできないことではないということがわかりました。

「原則」は少し勉強すればわかる内容です。

日本人は器用な民族だといわれますが、普段の仕事で手先を使っていないから能力が眠っているだけで、本当は誰でも出来ることなのに、ただ、出来ないと思い込んでいるだけ・・・・と私は思います。

  【 関連ページ 】⇒ 墨付けの大原則

3、設計


土地購入後、何の知識もない状態ではじめた「設計」!

最初に描いた平面図(間取り図)は、今見ると笑えてしまうほど幼稚なものだった。

方眼紙に書いたその図面(図面というのも恥ずかしい)は、ここが玄関、ここが風呂、ここがトイレ! といった具合に、ただ四角の箱の中に適当に部屋を配置してあるだけ。

使い勝手や動線など全く無視(というより意識なし)

  【 関連ページ 】⇒ 設計って、いったい何をすればいいの?


やがて、本屋で住宅実例集や住宅雑誌をせっせと買い込んで、間取りを研究した。

   ・・・洗脳された・・・・(^_^;


「わー、吹き抜けがあるとカッコイイ。天窓もいい。是非ほしい。」

勾配天井というのもおもしろい。ハイサイドライト地窓なんかもカッコイイ。」

スキップフロアなんてのもいいかも。」


間取り図には、たちまち吹き抜けや屋根裏部屋などが登場し、何度も書き直された。

妻も興味津々で、二人で夜遅くまで、ああでもないこうでもないとやっていた。

この段階は、家作りの序盤戦で最も楽しいひとときだった。

間取り図しか書けていないが、一応それらしくなってきた。

施工をプロの工務店に頼むなら、間取り図ができたところで施主側の「設計」作業はおしまいになるところだが、

施工を自分で全部やっちまおうというのだから、この後、いろんな図面を書かなければならない。

建築に関する専門書に少しは目を通さないと、この先へは進めない。


書店から、一冊の本を買って勉強した。

設計段階で買った本はこれ一冊だけだった。


私は中学、高校の頃から、勉強するのにあまり参考書を買い込まない性質で、そのかわり教科書や1~2冊の参考書のみを徹底的に読んで考えるというやりかたをしてきた。

今回もあまりたくさん買い込まず、この一冊を徹底的に読んだ。


今から思えば、私は最初にとてもいい本に巡り合った。

木造建築の要点を、わかりやすく、大事なところは詳しく説明されており、「伏図」という図面の書き方や、梁や根太などの断面寸法についての具体的な表も掲載されていた。実践的だ。

今、本屋の建築専門書コーナーに行っても、素人が最初に木造建築を勉強しようとする場合に、この本よりいいと思うものは今のところ見当たらない。

その意味で、私はとても幸運だったと思う。

この本と出合っていなければ、うまくいかなかったかもしれない。


さて、設計がひととおり出来た。

まずやらなければならないことは、建築確認申請書を作成して、役所に提出し、許可(「確認」という。)を受けることだ。

4、建築確認申請


申請書そのものは、ちょっと大きな文具店にいけば、建築確認申請書用紙ということで一式売られている。

申請書に何を書くのかというと、

 ○ 施主、設計者、工事監理者、工事施工者の住所、氏名、電話番号
 ○ 地名地番
 ○ 都市計画区域の内外の別
 ○ 防火地域の指定の有無
   (上記ふたつは役場に行けば教えてくれます。)
 ○ 敷地に接する道路の幅員、接している部分の長さ
 ○ 敷地面積
 ○ 主要用途(専用住宅など)
 ○ 工事種別(新築など)
 ○ 建築面積
 ○ 延べ床面積
 ○ 工事着手、完了の予定年月日
 ○ 構造(木造2階建てなど)
 ○ 屋根、外壁、軒裏の材質
 ○ 居室の床の高さ
 ○ 1、2階別床面積
 ○ 便所の種類(水洗、汲み取りなど)

・・・・といったことを記載するようになっている。


申請書に添付しなければならない図面の種類は「附近見取り図」「配置図」「平面図」「立面図(2方向からのもの)」だけである。

注意!

私が行った平成6年当時の状況です。その後、たびたび法改正が行われているため、現在には当てはまりません。


図面以外には、建物が地震や風で倒れないか、構造的に安定しているかを判断するために「壁量計算書」というものを添付する。

実際の施工にあたっては、これだけでは不足で、各階の「伏図」、「軸組み図」「断面図」「矩計図」なんてのも作成するが、建築確認申請書では不要になっている。

ここで法律の壁がある。

「建築士法」という法律があって、木造で延べ床面積が100平方メートルを超える建物の設計は、建築士の資格を持った者でなければできないことになっている。

延べ床面積が100平方メートルは、坪に直すと30坪である。

私たちが描いた平面図は30坪を超えていた。・・・ということは、無資格者が建築確認申請を出しても受け付けてもらえない。

逆に言えば、30坪以下の建物は、ド素人が設計しても堂々と申請できるのである。


  よしっ、とりあえず30坪以下にしてしまえ! (^^ゞ 



私は2階の平面図に、大きく吹き抜けを書き込んだ。吹き抜けになると床面積は出てこない。
これで30坪以下になった。

実際に図面を見ると、「現実にこんな家を本当に建てるの? 嘘だろうおまえ・・」という感じだった。

なにしろ、2階南側の一番いい部屋の真ん中が、大きな吹き抜けになっている。

見るからに怪しい (^_^;


それでも数字上は30坪以下だ。これで文句ないだろう・・ということで申請書を出すことにした。

私の考えた作戦は、本当に30坪以下の家をつくるのではなく、とりあえず許可をもらっておいて、施工しながら30坪以上に変更しようということだった。

しかし、そのためには建築士の資格が必要だ。

あとで二級建築士資格取得の勉強をして、資格を取ってしまうつもりだった。(資格取得は結局果たせぬ夢に終わりましたが・・)

(素人はどんなに勉強しても、建築関係の学校を出ているか、建築の実務経験がないと、建築士の試験を受験することすら出来ない仕組みになっているのです。)

土地を購入して4ヶ月後の平成6年9月、出来上がった建築確認申請書を抱えて、役場の都市計画課を訪れた。

果たして受け付けてもらえるだろうか?


「あのー、建築確認申請書を持参したんですけど・・・、個人で素人なんですが、自宅の図面を自分で書いて持ってきました。」 と、おそるおそる言ってみた。

「えっ!もう建物作っちゃったんですか?」

「あ、いや、建物はまだこれからです。申請書を持ってきました。」

「あー、それではまず、この階の奥の農業委員会へ行って確認を受けてきてください。それが終わったらこちらにお戻りください。」

「はーい。」



農業委員会では、住所から、農地でないことの確認をしてもらい、都市計画課に書類を提出して終了となった。

申請手数料は12000円だった。

書類はこの後、村役場から県の担当課に回され、実際の審査はそこで受けることになる。

問題がなければ7日以内に確認通知書が届くが、問題が見つかれば、「期限内に確認できない旨の通知書」というものが来て、書き直しや訂正ということになるのだそうだ。


それから毎日、仕事から帰ったらまず郵便受けを開けてみた。

今日もまだか? もうすぐ一週間になるのに通知書が来ない。

どうしたんだろう、と思った矢先に、県から封筒が届いていた。しかし封筒が妙に薄い。イヤな予感がする。

どきどきしながら封を開けてみた。


真っ先に目に飛び込んできた文字は、「期限内に確認できない旨の通知書」だった。

・・・・・・(-_-;)

通知書にはこう書かれていた。「上記による確認申請書は、下記の理由により建築基準法第6条第3項に規定する期限内に確認できないので、同条第4項の規定により通知します。」


   確認申請は失敗だった。


やはりダメだったか。素人がそう簡単にプロの真似ができるわけないものな・・・

期待していただけに落胆が大きかった。一瞬いじけた。

ダメな理由を読んでみると、階段部分は1・2階とも床面積に参入されるのだけれども、この申請書ではそうなっていないこと。

つまり、本当の延べ床面積は申請より大きいということだった。

あっ、なんだ。そんな単純なことか!

構造の計算が全然ダメだったとか、図面がダメだとかではないんだ・・・

これで、すぐに元気を取り戻した。(^o^)┘


私の考えでは、階段は1階と2階を結ぶものだから、1・2階とも床面積に入れたらダブルカウントになると思っていたのだが、実際のルールは違っていた。

もともと、100平方メートルを超えないギリギリのところ、99平方メートルで設計していたから、こういう間違いがあるとたちどころに100平方メートルを超過し、建築士でなければ申請できない面積になってしまう。


私はおもしろくなかった。

考えてみれば建築士法にうたっている100平方メートルというのは30坪だ。

一般の民家はだいたい30~40坪くらいの規模が多いはずだから、30坪というのはいかにも中途半端だ。

資格の要・不要の境が、明らかに「小屋」程度の規模と「住居」の規模とを分けるものならわかるが、30坪前後の住居などいくらでもあるではないか。

28坪と32坪でどう違うんだ!

昔、法律をつくった人たちが、現実を無視して100という切りの良い数字を設定しただけじゃないのか・・と疑いたくなる。

でも間違えたのは自分が悪いので、何とかして100平方メートル以下に落とさなければならない。

2階はもうこれ以上吹き抜けを増やせない。

しかたなく、玄関をかなり小さくすることにより、なんとか収まった。

図面に修正を加えて再度提出した結果、10月11日、無事に確認通知書を手に入れることができた。
 メデタシ(^o^)


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