第5話 ~ 「仮設」に手間取る

18、地上3.5mの別荘

在来工法で家を建てる場合、軸組みが終わったらすぐに屋根をかけ、建物が雨に濡れるのを防がなくてはならない。

そのことは重々わかっていたけれど、軸組が終わり、屋根の下地となるタルキを取り付け終わったときには、すでに12月となり、雪が降ってきた(^_^;

素人がはじめてやる屋根の工事、しかも地上8メートルの足場の悪いところで、雪が積もったところで・・・こうなるともう危険極まりない。

どんなときでも安全第一!

というわけで、またしても中途半端な状態で冬越しとなった。


翌年春、工事再開。

当然、真っ先に屋根の下地となる「野地板」を貼り付けた。

合板を屋根に運び上げ、釘でガンガン打ちつける。単純な作業だ。

屋根の上は気持ちよく、家づくりの全工程を通して、屋根つくりが私にとっては一番楽しかった。

屋根の上からは、林越しに街が見える。

当時はまだ回りに家は一軒もなく、林に囲まれているため誰からも見られることなく作業できた。

肉体労働が大嫌いなはずの妻も、快適で気持ちよい単純作業となると積極的になるのか、二人で屋根に上り、気持ちよい春の陽射しの中で屋根の上の釘打ちを楽しんだ。(^^)v

野地板が出来てからは、屋根本体を貼るまでの仮の防水処置として、ブルーシートで全面を覆っておいた。


さて、こうなってしまうと取り合えず雨の心配はない。

・・ということは、泊まる気になればこの現場に泊まれるということだ!

そう考えるとどうしても泊まりたくなった。

工事を進めるよりも、早く泊まって利用したくなった。



本来は早く屋根材を葺いて、外壁・床と、どんどん工事を進めるべきところなのに、次に私がとった行動は、この家で生活できるようにすることだった。

つまり、仮設のトイレと水道とキッチンをつくろうということ。


今の状態は「家」ではなくかなり大きな「小屋」

いや、小屋にすらなっていないかもしれない。

なにせ、雨は取り合えず凌げるとしても「壁」がない。



1階の床組みは全く出来ていなかったが、2階には根太の上にコンパネを並べていたので一応「床」がある。生活できる。


想像してみてください・・・

地上3.5メートルの高さのところに、約35畳の広さの2階床があり、壁は全くないため周囲がすべて見える。

周囲に家はなく人がいないので、こちらが見られることはほとんどない。

2階で飲み食いしたり寝泊りしたら面白そうだ・・・



1階だと何かと不安だが、2階なら安心だ。

まだ階段もないし、上り下りにはハシゴを使う。

夜寝ていても、突然クマや野犬に襲われることはなさそうだ。

こういう「別荘」は、日本中探してもなかなか無いのではないだろうか?



工事が進んで壁が出来てしまうと、この開放感は失われる。

ならば、開放感たっぷりの今この状態のうちに遊んでおこう!


・・・と、こんな考えだから工事の進捗ペースが非常に遅いのであった。

まず仮設トイレ

人間は、入れること、つまり食べることや飲むことはある程度我慢できるが、出すことは我慢できないので、真っ先に必要なのはトイレである。

わが家はシャワートイレ付きの簡易水洗にする予定なので、便槽は基礎工事の際にすでに埋め込んであった。

その便槽に直接「落ちる」ように、長さ2.7mの塩ビ波板を丸めて「通路」とし、トイレそのものは地上約2.5mの高さにつくった。

外壁のラインより外側に張り出して、1階と2階の間の「中2階」の位置に仮設トイレ小屋をつくったのだ。

地上からトイレには入れない。2階からしか入れない。

だから安心感もあったし、開放感もあった。(^^)v

用を足しながら、ゆったり座って広々と下の風景を見降ろすことができたし・・

私は大満足だったが、妻や女性の客人からは評判が悪かった。なんでだろう?



次に仮設水道、さらに2階に仮設の流し場・・・
これも作ってしまった。

いつになったら本体工事の屋根や壁にとりつくのだろう・・・


19、足場を運ぶ

平屋建ての家ならそんなに苦労しないが、2階建てとなるとちゃんとした足場を組まないと工事できない。

軸組みが出来ても、足場を組まないことにはその先へ進めない。

私は当初、足場丸太を購入して丸太の足場を組もうと考えていたけれど、なんとなく面倒くさくて、足場のないまま屋根の破風板を貼ったりしていた。

どのようにしたかというと、屋根に登り、命綱を体にくくりつけて屋根の端っこに行き横ばいに伏せ、予備の釘を口にくわえ、左手には釘をあらかじめ所定の位置に半分打ち込んでおいた破風板を持ち、右手には玄能を・・・

屋根から少し身を乗り出す格好で、長さ3メートルもある破風板を母屋の端部に押し付けながら、すかさず釘打ち!

地上8メートルもの高さで屋根の端っこに腹ばいに伏せ、命綱をつけながらの力技!

おそらく労働安全衛生規則なんかに思い切り違反していたのでは(^_^;




こんなことをしているうちに、やっぱり怖くなってきた。

観念して足場を組むか・・・


このころ、無事上棟できたということで、木材を買ったところのSさんに出来上がった軸組みの写真を持って報告にいった。

Sさん曰く

「今度は外周りですね。ところで足場はどうする?」

「丸太足場を自分で組もうかなと思っているんですよ。」


すると、

「今時丸太足場なんか誰もやってないよ。あんなもの危ないからやめといたほうがいい。うちに枠組み足場がいっぱいあるから貸してやろう。

必要なだけ持って行けばいい。トラックも貸してあげるけど、自分で積んで自分で運転していくんだ。」



ラッキー! 私はとても喜んだ。



「枠組み足場」とはビル工事などによく使われているが、一般の住宅では「ビケ足場」というのが主流で、枠組み足場は現在はあまり使われていない。

枠組み足場は、頑丈だけど重い。


さて、4トントラックを借りて足場を積み込んだ。

ユニック(トラッククレーン)の動かし方や、トラックロープの結び方(荷をしっかりと締め付けるトラック用の結び方)などは学生時代に土木工事やちり紙交換のアルバイトをしたときに覚えていたので、そんなに違和感はなかった。

本当は、クレーンや玉がけの資格がないとやっちゃいけないことなんですが・・(^^ゞ



普通免許で運転できる範囲内とはいえ、やはり4トントラックはデカイ!

普段乗用車しか運転していない私は、走り始めの10分は冷や汗の連続だった。

国道に出てからしばらくして、運転にも慣れてきた頃、左側のバックミラーを見た私はビックリ仰天!!

一瞬、全身の血が凍ったかと思われるほど驚いた。

クレーンのついたトラックには、荷揚げや荷下ろしの際にトラックが荷の重さでひっくりかえらないよう足を踏ん張るために、アウトリガーというものがついている。

アウトリガーはトラックを停車して荷揚げ作業するときに横に張り出して使うけれど、普段走行するときは邪魔になるからしまい込んでおく。

走るときは邪魔になるからしまいこんでおかなければならないはずのアウトリガーが・・・

あってはならないはずのアウトリガーが、なぜかバックミラーに映っていた (@_@)


当然、すぐにトラックを左脇に停めて外に降り、あわててアウトリガーを押し込んで固定した。

国道とはいえ、町と町の間に位置する田舎道だったため、横を歩いている人もいなければ建物もほとんどない場所であり、すぐに発見したため大事には至らなかったものの、背筋は寒くなり心臓はバクバク・・・

落ちつけ、落ち着け・・・



自分では、出発前にアウトリガーをちゃんと押し込んだつもりだったが、きちんと固定されていなかったのだ。

だから緩んで少しづつ外に出てきた。

発見したときには30センチほども出ていただろうか・・・

確認が甘かった・・・


私は気持ちが落ち着くまで、かなり長いことその場に立っていた。

動揺したまま走りはじめれば、また何か事故やトラブルがあるかもしれない・・


それに、自分で自分を怒りつけていた。

大事故に結びつくかもしれないミスをなぜやった!!

気持ちがたるんでる、なっとらん!



・・・と、この話は、私の家づくりの全過程の中で最大の失敗談です。

結果として何かトラブルやまずいことがあったわけではありませんが、大事故に結びつきかねない原因をつくったわけですから。



手作りで自宅をつくることは楽しいです。夢があります。ワクワクします。

自分の能力を再発見できます。格安でつくることも出来るし、私の場合はローンの返済など一切なしで完成した家に住んでいます。建てた後の経済的負担はありません。

そんないいことづくめに思える手作りハウスですが、力仕事が嫌いな人でしたら建築の作業は苦痛に感じることでしょう。

逆に、体を動かすことが好きな人や、モノづくりが好きな人にとっては、最高に充実した遊びとなるでしょう。

どっちにしても何よりも注意しなければならないことは「安全」だと思います。

家づくりの過程で、出来ないと思っていたことが出来るようになり、形が見えてきて、新しいことをどんどん覚えていくためについ有頂天になり、そこに落とし穴が待ち受けます。


家一軒を自力でつくるとなると、その過程で実にいろいろな作業があるため、いろんなことを覚えます。

中にはバックホウのような大型機械を運転したり、高い足場の上で作業したり、30kg以上もある重い材料を運んだり、

ノコやノミを使って精度が必要な木材加工をしたり・・・重いのから軽いのまで、荒っぽいのから細かいのまで実にいろいろです。

危険はどんな作業にもありますから常に気をつけています。



素人がそのようなものに挑戦することには批判もあるでしょう。

万一怪我でもしてしまったら何を言われるかわかりません。

でも私は思います。
   「やらなければいつまでも分からない。」と。

よく言われるように、危険だからといって子供に刃物を持たせないようにしていると、大人になってからも刃物を扱えない不器用な人間になってしまったり、刃物の怖さを知らない人間になってしまったりするのと同じように、

危険だと思われているものでも、それぞれに「正しい扱い方」や「気をつけどころ」がちゃんとあるので、それを早く覚えてしまったほうが安全なのです。

私は家づくりを通じてただの一度も怪我をしませんでした(^^)v


20、モデルハウスを見に行こう!(1)

家をセルフビルドする人は、大手ハウスメーカーのモデルハウス見学なんか縁が無い・・・と思うかも知れませんが、そうでは無いんです。

軸組みが出来上がって屋根も出来・・・と、ここまでは、どちらかというと単純な工程です。

やることは決まっているし、デザインという意味あいからすれば悩む余地はあまりないです。

力仕事、単純作業、地味な構造部分、下積み・・・というイメージかな。



その後の工程としては、壁に「間柱」や「筋交い」などの下地材を入れ、窓枠をつくって窓をはめ込む。

この段階あたりから、悩むようになる。

悩むといっても「楽しい悩み」なんですが・・・(^o^)


例えばそれぞれの窓の高さはどのあたりにするか?

70センチか、90センチか、はたまたハイサイドライトにしてうんと高い位置にとりつけるか?

窓のタイプはどうする?

一般的な引き違い窓か?

いや、それでは面白くない。縦すべり出し窓のほうが今風でカッコイイかも?

横すべり出し窓なんかも面白い。

出窓は絶対ほしいが、どこに出窓をおく?

出窓のタイプは? 台形か、三角形か? その奥行きはどのくらいがいいか?

上げ下げ窓なんかも、1箇所くらいあってもカッコイイ!

どうする~~~? 

   ・・・と、悩むわけです。


そんなことは設計段階で決まっているだろうが! とお思いですか?

普通はそうなんでしょうけれど、手作りハウスの場合はそうではありませんでした。

一応、建築確認申請という、建築基準法で義務付けられたとおり平面図、立面図は審査してもらいますが、平面図には窓の位置が書いてあるだけで、窓の「高さ」はわかりません。

「立面図」には窓が書いてありますが、寸法は明記していません。

かなり大雑把な図面です。しかもどちらか2方向からだけの絵なので、例えば南面と西面を書いていれば、北面と東面の様子はどこにもでてこないのです。

つまり在来工法の場合は、窓の高さやタイプなんてものは、作りながら決めていけばいいことであって、仮に当初段階で決まっていたとしても、いくらでも変更できるのです。

まして自分で手作りする場合は、変更は気分次第で瞬時に決定できますヨ。


同じように、外壁の色や模様、内装の詳細、コンセントやスイッチの位置、個数、照明器具のタイプなど、そういう細かい部分は「変更できる」などというレベルではなく、最初から「決まっていない」のですから・・・


というわけで、そういう細かい部分については「他ではどうなっているんだろう?」という好奇心が当然でてくるわけです。

キッチンの流しがあったとして、その奥の窓ってどのあたりにあったっけ?

とか、照明器具はどんなのが使われているんだろう? 間接照明なんかムード良さそうだけど実際はどうなのかな?


他人の家に勝手に入って、ジロジロと辺りを眺めまわしたり、あげくはメジャーを取り出して寸法を測定しだしたり・・・

というのは流石にはばかられるけれど、モデルハウスなら「見せる」ことが目的なので堂々とはいっていけるというわけです。



ただし、普通の人と決定的に違うところは、「家を買う予定は全く無い」ということでしょうか。

それどころか既に着工済みである。

そんな人がモデルハウスを見学するのはズウズウしいかもしれませんね(^^ゞ

営業マンには無駄なおつきあいをさせてしまうわけですからね。

だから、営業マンはつきあってくれなくてもいいのに・・・(^^ゞ


実は私はモデルハウスに行くのは気乗りがしないのです。

行けば必ず
「建築のご予定はありますか? ご家族構成は? ご住所は?」などと聞かれたうえに、アンケートを書かせられるからです。

自分達が歩く後ろを営業マンがくっついて歩き、落ち着いて見学できないことが多いですしね。

でも妻は行く気満々でした。見学はいつでも大歓迎。常に、行く気満々です。

他人の家の中をタダで堂々と見られることは非常に楽しいことらしい。

しかも豪華な家である! 夢いっぱい!


私が、
「窓はどうしようかな? 外壁はどんなのがいいかな? キッチンの配置は?」

そういうふうに悩みだすと、必ず

「実例を見なきゃダメだよ。参考になるのがあるかもよ!!」

この一言はかなり効果がありました。


そういうわけで、建築期間中に各地の住宅展示場に何度となく通ったのです。

私はシブシブ、妻は嬉々として・・・


でも、行けば行ったなりに役にたちました。

手作りで自宅を建てる人にとってのモデルハウスの効用について、お話してみようと思います。

21、モデルハウスを見に行こう!(2)

ハウスメーカーから家を買う予定など全くないのに、図々しくもモデルハウスに乗り込んでくる怪しげな二人。

玄関を上がると、担当者が出迎える前にさっさとキッチンやトイレなど見学を始めてしまう。

担当の営業マンが近づくと、この訪問者ははじめのうちはさりげないことを聞いてくる。

 「この壁が珪藻土というやつですか?」

 「このキッチンは広くて使いやすそうですね。」

 「窓の下に蓄熱暖房のパネルがあるんですねえ~」

 「この家の換気はどういう仕組みになっているんですか?」



どれも、営業マンが自社住宅のウリを話しやすい質問だ。

 「ふーん、そうなんですか・・・」


訪問者は感心して熱心に聴いている。


だんだん乗ってきたところで、怪しげな訪問者の質問は変化しはじめる。

 「ところで、梁のピッチはどのくらいですか?」

 「断熱材のグラスウールは16kのやつ? もっといいやつ使ってんの?」

 「このペアガラスの熱還流率は?」

 「柱は集成材? 樹種は何? 通し柱はちゃんと4寸あるよね?」

 「根太のピッチはどのくらいで入れてます?」

 「外断熱の外壁って、こうなっているんですか。へー、重い外壁材を長~いビスで軟らかい断熱材をはさんで固定してるだけなんだー。
  
  これって地震で揺すられたりしても大丈夫なんですか?」

 「金具接合の工法って、結露で金具の鉄が錆びたり、金具の結露で木材が腐ったりしないの?」



  ・・・・なっ、何なんだコイツは・・・

営業マンはきっとそう思ったことだろう。


さりげなく聞いてみるか・・
 「お客さん、詳しいですね。建築関係の方ですか?」

 「いいえ。違いますよ。」

 「? ? ・・」



いったいコイツの正体は何だ!


そもそもコイツの目の先にあるものは、普通の客が見るようなものではない。

コイツは天井の回り縁や、ドア下のアンダーカットを見たり、窓の外から軒天や破風を覗いてみたり、階段の桁の寸法を指で測ってみたり・・・

コイツは何を見に来ているんだ?



はじめのうちはくっついて説明していた営業マンは、次第に距離を置くようになり、気がつくと2メートル以上離れてしぶしぶついてくる。


・・・というふうに、私はモデルハウスの営業マンにとっては、大変嫌な客だったかも。営業マンさん、ごめんなさいね。

営業マンは自社住宅のウリについては説明が上手だけれど、ほとんどの人は構造的なことに関してはまともに答えられないか、あるいは誤魔化してお茶を濁すことが多かった。


でも、こちらは他人の家の内部を十分に見ることができるので、結構参考になるのです。

本当に知りたいことを知るためには、出来ればあちこちの壁を壊したり天井をひっぱがしたりして中を見たくなるのだけれど、さすがにそれは・・(^^ゞ



一般にモデルハウスは豪華につくってあるので、見ていると夢が膨らむようになっています。

夫婦で見に行くと、奥さんのほうが後で

 「うちもあんな風にしたい!」

と言い出す。 当然でしょうねえ。


実は私が当初頭の中に描いていた自宅建築の構想は、出来上がったものよりもずっと質素で簡単なものでした。

出窓もないし、天窓もない。つくるのが面倒そうだし・・

2階床板がそのまま1階天井でもいいや。その方が天井つくるの省けるし、ワイルドな感じがしていいかも。

高気密高断熱なんて縁が無い。換気システム? そんな贅沢なモン要らん! 自然の風でいいじゃんか・・・


という考えだったはずが、モデルハウスの見学を重ねるうちに、だんだん知識がついてきた妻の、要求レベルがドンドン上がっていきました。

   いくら要求レベルが上がっても、なんせ手作りだ。

   つくるのは自分だ。面倒なものはイヤだ。



しかし、一旦良いものを見て知識がついてしまった妻の要求レベルはそう簡単には下がらない。

 「出窓は絶対にゆずれない!」

 「天井がない? えっ、何考えてんの。冗談じゃない。」

 「コンセントは全部の部屋にたくさん欲しいからね・・」

 「ピアノを置く部屋の床は、すごく頑丈につくってね。」

 「内装は無垢だよ、無垢!」


人は常に現状より難しいことに直面しないと進歩しないんですねえ。

わがままな要求は、進歩するために必要な栄養源!

面倒で手間のかかることは嫌だなと思いつつも、一度やって覚えてしまえば自信になりました。 

やりゃー大抵何でも出来るんです(^^)v



はじめのうちは「どうせ自宅なんだからテキトーにつくればいいや。山小屋に毛の生えた程度で十分」と思っていた私でしたが、

出来上がってみると「小屋の大きいやつ」でなく普通の「住宅」になっていた。

自分で言うのも変だけど、「一見して素人がつくったとは思えない」ような家になったと思っています。

モデルハウス見学の最大の効用・・・それは「良いもの」を見ることにより欲が出たことでした。

   「欲」は使いようですね。

広告

22、地震発生!

平成10年、私は盛岡市にある県庁に転勤になった。

やっと、建築現場に近い街に住むことになったのだ。

これまでは太平洋沿岸の街に勤めていて、建築現場まではクルマで片道2時間半以上かかっていたが、これからは30分で行ける。

「これから工事がドンドン進むかも・・」という期待を抱いたのだった。




ところが現実はその反対だった。

部署によっても違うけれど県庁というところは総じてとても忙しいところで、私が異動した先も例外でなく、私は3つの職名を兼務させられて連日深夜まで残業の日々。

夜中3時頃帰宅することもザラで、帰り道に警察から職務質問されることもあるという始末。

土日も出勤する日が多く、たまに休める日曜日があっても疲れ果てていて、日常生活の雑事をこなすのがやっとで、建築工事に行く気力も時間もすでになし・・・という有様

せっかく現場近くに住んでいるのに、全然工事が進まなかった。(+_+)☆


そんな日々を送っていた平成10年9月3日、あの地震が起きた。

この日、午後5時頃、職場にいた私は突然強い揺れを感じた。

県庁の建物全体がゆっさゆっさと揺れている。 おぉー!かなり強いぞ。

それっ、ニュースだ。テレビつけろ。


震源は岩手山山頂西側附近。

岩手県の最高峰、標高2040mの「岩手山」は当時火山活動が活発になりかけており、附近には入山禁止の措置がとられていた。

その岩手山を震源とする地震だ。

岩手山の麓の雫石町では震度6弱を観測。県道のあちこちで土砂崩れが発生し、通行止めとなった。

県道の奥には温泉地があり、宿泊客百人以上が取り残されているという。(@_@)


当然、県では即座に災害対策本部が設置され、非常配備体制がとられたため、土木や防災とは関係ない部署である私も、すぐ家に帰ることは出来ない。


私は不届きながらも揺れの強かった地区の人たちのことよりも、建築途中の私の家のことが心配になった。

建築現場は、震度6弱を観測した雫石町の隣だ。


最近の普通の住宅ならばその程度の地震では壊れない。


  だがしかし!! タイミングが悪すぎる。タイミングが・・・


このときの私の家の状態は、上棟が済んで屋根をかけたものの、壁がなく、さらに悪いことに地震に対抗するために絶対必要な「筋交い」が未だ入っていなかった。


軸組み工法の家は、地震による水平力に対抗するために、斜めの部材である「筋交い」や、「火打ち梁」というものを必ず入れている。


役所に建築確認申請をするときも、筋交いの入る場所の位置や太さを明記して、「壁量計算書」というものを作成して、地震や風圧力に対して安全であることを確認することになっている。

当然、私も「壁量計算書」を作成したし、筋交いも入れることになっていたのだが、軸組み工法で家をつくる順番としては、

上棟の段階では薄い板切れで「仮り筋交い」を打っておいて、まずは真っ先に屋根をかけ、その後に筋交いを入れるのが普通だ。

板切れによる「仮り筋交い」は、上棟作業にときに柱が倒れないようにしたり、柱の垂直をあわせるのが主な目的で、地震に対抗する力などない・・・(-_-;)



地震のタイミングとしては上棟直後の方がまだマシだ。軽いから・・・

重い屋根が乗っかって、頭が重くて不安定になったくせに、筋交いが未だ入っていないというこのタイミングは、一番地震が起きて欲しくない、在来工法としては一番弱いタイミングなのだ。


生き物の一生でいえば、例えばウミガメの赤ちゃんが卵から出て海までヨタヨタ歩いている瞬間。

ヌーの群れが川を渡る瞬間。

そういう、一番外敵に襲われたくない瞬間というのがある。住宅建築ではまさにこのときがそうだった。

よりにもよって何だ!


私としてはすぐに建築現場に飛んでいって状況を確認したかったが、「非常配備体制」で県庁を離れなれない。

ああ、心配だ、心配だ・・・


やっと帰宅が許された深夜、まっすぐ家には帰らずに、クルマで隣町の建築現場へ直行した。

道をどんどん奥まで進む。

最後のカーブを曲がる手前まで来た。このカーブを曲がると我が家が見えるはず。

私はぐっと息を呑んだ。

最弱のタイミングで震度6クラスの地震・・・

最悪の状態、つまり完全に倒壊してしまっている姿も、ひょっとしたらあり得るかもしれないと思っていた私は、覚悟を決めてカーブを曲がった・・・

月明かりの下、我が家が見えるはず・・・


ん? 我が家が見えないぞ。

あっ、地面近くに大きな黒い塊がある。

屋根だ! 屋根が地面近くに崩れている。

家が完全に倒壊してしまっている!!

なんてことだーーーーーーーーーーー!!!






・・・なんちゃって   嘘です。(^^ゞ

我が家はちゃんとそこに建っていました。

取りあえず安心して帰宅し、日曜日の明るい昼間に細部を点検。


折れたり曲がったり、はずれたりゆがんだりしたところはないか?

そういうところは全くなかった。

筋交いが入っていないのに、2階建てのこの家は全然ビクともしていなかった。


うーん、たいしたもんだ。強い軸組みだ。やるじゃん俺・・・

この家は梁間には継ぎ手をつくらず、すべて一本もので通していたし、2階の耐力壁の下には必ず1階の耐力壁があるようにしていた。

そして、構造は単純明快だ。複雑ではない。

柱と土台、胴差は、込み栓やクサビで緊結していたし、梁との接合部は「渡りアゴ」という結構ガッチリとした仕口を採用している。


素人ながらに勉強した結果で、まじめに、強い家づくりを目指して設計したのが良かったかも・・・

今後、さらに本命の筋交いがはいるから、結構強い家になるかも。

構造の強さを犠牲にした姑息なデザインなんかしてないぞ。

在来工法・・・やるじゃん。

※ セルフビルド体験記は、平成16年にここまで書きましたが、その後、管理人のさぼり癖が出て、しばらく書かないうちに記憶も薄れ、ここで途切れてしまいました。
まあ、いろいろエピソードがあるのは、主に家づくりの前半部だったので、この辺で終わりにします(^^ゞ

後半部のエピソードは、拙著「自分でわが家を作る本」の中に少しに書いています。

最後まで読んでくださったアナタ  ありがとうございましたm(_ _)m

こんな記事も読まれています

セルフビルドの費用について セルフビルドの自宅を紹介 DIY小屋の作り方 ハーフビルドの家作り