第3話 ~ 木材刻み

9、転勤・・そして古屋敷へ

基礎の次はいよいよ木材の工事だが、その前に、少し月日は遡り・・・


平成7年春、私は岩手県沿岸の北の端から南の端へと転勤になってしまった。

クルマで5時間かかる。岩手県は全国一広い県である。

建築現場までの距離は2時間半となり、相変わらず遠い (-_-;)

さて、転勤先で棲家を確保しなければならないが、これに意外に苦労した。

なにしろ猫を3匹も飼っていたので、どこも貸してくれなかったのだ。

3年前、帰宅途中で自分についてきた一匹の猫を思わず飼ってしまったのが運のツキで、その猫が子猫を3匹生んでしまい、一匹はなんとか引き取り手を見つけたがあとはダメで、結局今でも3匹飼っている。

猫を飼っていると公舎はもちろん、民間の借家もどこも貸してくれない。

一日探しても借家が見つからず、途方に暮れていたところに情報が舞い込んだ。

転勤先の人がツテで探してくれたところ、近くに大きな古い家があり、日当たり良好で部屋が7つもあるそうだ。

猫なんか何匹いてもOKという。

クルマが3~4台停められる駐車場付き。畑もつくれるとのこと。

家賃は3万円。敷金礼金いっさい無し!


いい話ではないか! 早速行って見た。

  うっ! こ、これは・・・


江戸時代に建てられたのではないかと思われるその家は、大家さん一家が以前住んでいたというもので、まっ、何と言ったらいいか・・・

つまりその、江戸時代の農家風住宅とでもいうべきか。(^_^;


  中に入ってみた。


黒光りする大黒柱があるぞ!

柱が少し傾いている。あっ、戸を閉めても上に2cmも隙間がある。

断熱材? そんなもん無い!

洗面所の壁は板一枚で、節穴から外の景色が見える。ああ、春の日差しが美しい!

冬はかなり寒そうだ。自然と一体になれる家とでも言えばいいのかな?

畳はかなり古そうだ。色がかわっている。

歩くとブヨブヨと沈む場所がたくさんある。タンスは垂直に置けそうもないな。

茶の間(「リビング」ではなく、あくまでも「茶の間」!)は、暗~~い。

キッチンダイニングの広さ(だけ)は申し分ないな。

部屋は確かに7つあるが、使えるのは3つで、あとは床がない。

うーん! 先祖代々の霊が7~8体くらいはお住まいになっているかもしれないな。


ここに住む?

妻は当然! 大反対だ。

しかし私は・・・閃いた。

ここならば、木材を庭に大量に積み上げて、家に居ながらにして構造材の刻み作業が出来るではないか!

私はなんて運がいいんだ。 千載一遇のチャンス!

こんな機会は、普通の人にはめったにないぞ。

この幽霊屋敷のような家に住むか?

妻は当然大反対だが、私は説得した。

「しかたないじゃないか。ほかに貸してくれるところがないんだから。」

「猫は生き物だ。生き物を飼ったからには捨てるわけにはいかないんだ。」


(実際には「方言」で会話していますが意味不明だと困るので、 あえて標準語で書いています(^^ゞ )



結局、「猫」が決め手になり私たちはこの屋敷に住むことになった。

一旦飼った猫は捨てられないということだけは、共通認識だった。

実はこの直後にもう一軒、猫を飼っても良いという借家の紹介があった。 家賃5万7千円。 街中にある比較的新しい、小奇麗な一軒家だ。

しかし、この幽霊屋敷に魅せられた私はそれを蹴って、強引にここに決めてしまったのだ。


妻の落胆ぶりは相当なものだったが、私には戦略構想があった。

なにしろ、木材の刻みをやるにはここは最高といってもいい環境だった。

敷地が広いし、家の中にも使わない部屋がある。 つまり、家に居ながらにして作業が出来る。

隣家とも距離があり、うるさい!と言って怒られることもなさそうだ。


借家やアパート住まいのサラリーマンにとっては、何か日曜大工をしようとしても、作業する場所がない!というのが普通だろうから、この家はそのような人にとって天国のようなところだった。

休日は、刻み作業をしていたとしても家にいられるわけだから、昼飯も家で食べられるしお茶タイムもできる。普段の日曜とたいしてかわらない。

建築現場まで片道2時間半もかけて往復するよりずっといい。


転勤族の我々としては、ここに住むのはおそらく3年程度だろうから、人生80年として、その中の3年なんて一瞬にすぎない。

こういうところに住むのも滅多にできない経験だし、後に想い出にさえなるだろう。

人間は「慣れる」生き物だ。 どんな幽霊屋敷でもすぐに慣れる。

一旦最低レベルに慣れてしまえば、現状より少しでも良くなると、そのことだけで随分と満足が生まれるものだ。

その反対に、高いレベルにばかりいると、少しでもレベルが下がると面白くなくなって落ち着かない。不機嫌だ。

この屋敷は「最低レベル」のようなものだから、あちこち手を加えて改善することはあっても、これ以上悪くなることはなさそうだ。



つまり・・

この屋敷に住む  ⇒ 家にいながらにして構造材の刻みが出来る。
             ⇒ 後に想い出話となるであろう、面白い経験が出来そうだ。
屋敷に手を加える ⇒ 生活が改善されて満足度が高まる。
             ⇒ 本番前に、大工仕事の練習が出来る。

どうじゃー! なんと一石二鳥ならぬ、一石四鳥ではないか。(^^ゞ


さて、この屋敷に住み始めて数日が過ぎたある日の午前10時頃、職場にいた私のところに電話がかかってきた。

「係長、奥さんから電話です。」(当時私は係長でした。)

どれどれ・・

受話器の向こう側から、ただならぬ気配が伝わってきた。

何か事件が起きたようだ。 向こうは興奮していてなんだか状況がよくわからないが、

「とにかく早く来てよね!」 ということなので、

2時間ほど休みをもらって、あの幽霊屋敷に戻ってみると・・・



玄関を入った。茶の間に行ってみた、何も変化はない。

そして台所に入った瞬間、異様な光景が目に飛び込んだ。


台所の中央にはテーブルが置かれているはずだが、そこにあったものは土埃にまみれた90㎝×180㎝の大きな合板の天井板だった。

台所全体が埃っぽい。床もザラザラしている。

思わず上を見上げると天井がない!

屋敷の屋根裏が見えるだけでなく、一部から青空も見えている。

この家は屋根裏の換気を良くするためか、屋根の上に小さな屋根が乗っかっていて、その換気口から空が見えているのだ。

妻は台所の片隅に茫然と立っていた。

どっ、どうしてこんなことになるんだ!!?



妻の話を聞いてみると、家中隙間だらけのこの家のどこかから、猫が天井裏に入ってしまったらしい。

しばらく天井裏を歩いている音がして、それが台所の真上に来たなと思った瞬間、天井板とともに猫が降って来たのだそうだ (@_@)

天井板の落下とともに、屋根裏に長年にわたり積もっていた砂ぼこりが落ちてきて、台所中に散らばったというわけだ。

そうか・・・この家の天井板の固定は、猫一匹の重量に耐えられないほど弱くなっているのか。


急いで、且つ入念に改良工事をしないといけないな・・・

早く満足度を上げないと(いろんな意味で)ヤバイかも・・・(^_^;


古民家を借りて住み始めたものの、猫の重みで天井が落ちてくるようでは困る。

さらに、雨が降ってみて気がついたが、家の何箇所かで雨漏りがするではないか!

さすがに雨漏りについては大家さんに言ったら、数日後屋根業者が来て、瓦を何枚か新しいのに取り替えていった。

さあ、それからは休日といえばせっせと家の補修に励んだ。

古い家というのは、部屋数はあっても収納ということをあまり考えていない(というより、モノが少なくて考えなくとも良かったのかも?)のか、収納スペースというものがほとんどない。

だからDIYででデカイ収納棚をたくさん作った。

押入れもなかったので、簡易な布団収納棚もDIYで作った。

台所の天井板は、野縁(のぶち=天井板の下地になっている一辺35㎜ほどの角材)に釘で固定してあるだけだったので、新たにビスを打ち込んで頑丈にした。

キッチン、洗面所の床にクッションマットを敷き詰めた。

キッチンの収納扉は腐りかけてボロボロだったので、メラミン樹脂塗装板を貼り付けて小奇麗にした。

茶の間の掘りごたつの穴は要らないので、周りの畳と水平になるように取り外し可能な仮床を取り付けた。

寝室にしていた部屋が玄関から丸見えだったのと、寒いので、縁側の途中に仕切り扉をつくって取り付けた。

その扉の下や、各部屋の出入り口には、冬に戸を閉めて暖房しても猫が自由に行き来できるように、小さな「猫専用扉」をつくって取り付けた。


猫専用扉 (上に蝶番がついて可動式になっており、手動でフタをして猫の通行を制限することも出来る。


照明器具も何個かは新しいのに替えた。

猫が天井裏に上がれないように隙間を塞いだ。

外に面した窓の隙間を隙間テープで塞いだ。

雨の日でも陽のあたる縁側に洗濯物を干せるように、ヒモを引っ張ることにより上げ下げ自由な洗濯ロープを取り付けた。


これらの補修は全部で2ヶ月くらいかかったが、おかげで大工仕事に慣れ親しむことができたので、いい練習になったのではないかな?

わずか3年程度しか住まない家に投資するのは勿体無い無駄なことにも思えるが、目に見えない効用もあったのでは・・・と思っている。

どうせ家賃も安いのだし。

この時点で私はまだ、ドリル以外の電動工具を持ってなかったので、ノコギリやカンナなどの手道具だけで作業していた。


10、模型作り

さて、基礎工事が終わり、次はいよいよ家の構造を支える柱や梁などの構造材を加工する段階になるわけだが、私はその前に、家の軸組みの模型をつくってみることにした。


模型というのは最高の設計図でもあるし、どんな家ができるのか誰かに説明する場合でもとても役に立つ。

軸組み模型づくりは、今から考えても本当にやって良かったと思っている。

刻みを始める前に「軸組み模型」を作ろうと思いついたのは、単に、図面だけでやるのは自信がなかったからだ。

「軸組み模型」というもの自体どこかで見たことがあるわけでもなく、当時は私自身のオリジナルだと思っていた。

ホームセンターからバルサ材の工作材料を買い込んで、思いついたとおりに工作してみた。

はじめてのことだし、マニュアルがあるわけでもなし。


やってみると、図面ではわかっていたつもりのことが、「はて、ここはどうなっているんだろう?」という場面がたびたび出てくる。

そのたびに考え込んだりするので、時間はかかった。

平日の夜2時間くらいづつと、日曜日一日やって、計7日間くらいかかったかな。

工作している部屋には、3匹の猫が交替で様子を見にやって来る。

私の膝にスリスリするのはいいが、工作中の模型にまでスリスリと頭を擦り付ける。

猫なんぞに壊されてたまるか!

「しっ、しっ! あっち行け!」と、追い払いながら作り続ける。

模型が出来てみると、我ながらうまく出来たような気がして、惚れ惚れしてきた。

ついでに、2階床の一部や、屋根裏部屋の床の一部も貼ってみた。

さらに、階段の踏み板も貼り付けてみた。

    おー! 家っぽくなってきたではないか(^^)v


ここまで来ると、屋根や外壁、窓も取り付けたい衝動にかられてしまう。

でもそこまでやってしまうと、構造部分である肝心の軸組みが見えなくなってしまうので、我慢してここでストップしておいた。


模型をしげしげ眺めてみると・・・・デ、デカイ!

柱だけで60本以上ある。土台や梁・桁・母屋など、構造材全体ではすごい数だ!

これを一人で刻み加工するのか・・・・ やったこともないのに。

妻も「結構大きい家だよね。」と感心し、夢が膨らみつつも、

「本当に出来るの? 今からでもプロに頼んだ方がいいんじゃないの?」という疑問・不安を抱いていることが、ひしひしとこちらに伝わってくる。

しかし、もう後には引けない。引く気もない。

子供の頃から抱いていた「やりたいこと」は、何が何でもやるべきだ。やらないでしまったら後悔するぞ!・・・

と、何かの本で読んだことがあり、心に引っ掛かっていた。

11、木拾い

出来上がった模型と図面をもとに、軸組みに必要な木材の数量を拾い出していった。

例えば、断面が4寸×9寸で長さ4メートルの梁材を○○本・・という具合に。

こういう作業を「木拾い」というそうだ。

必要なものを拾い出していくからそういう名前なのかな・・

   さて、どこから木材を買おうか?

今住んでいる借家の補修で、収納棚などの材料を買ったときの製材所は、あんまり感じが良くなかったし、標準的な単価より高いような気がしていた。

あそこはやめておこう。


そんな4月のある日の夜、仕事の用事で地元の人たちと懇親会をする機会があった。

集まったメンバーの中に建築をやっているという社長さんがいたので、自分は今こんなことをやっているんですよ・・・と、ほろ酔い気分で手作り建築のことをその社長さん(仮にSさんとしておきましょう。)に話しかけた。

「係長さんは面白いことをやってますねえ。」

「今度、構造用の木材を買いたいんだけど、どこから買ったらいいかわからないんですよ。Sさんはどこかいいとこ知りませんか。」

「あー、うちでもやってるよ。うちから買ったらいい。」


・・・やった! わずかなりとも、自分のことを知っている人なら説明の手間が省けるし、安心できそうだ。


「木拾いまで終わっているので、今度会社の方に相談に行ってもいいですか?」

「ああ、いいですよ。」

それから数日して、Sさんに電話をかけた。

「この間、木材を買いたいとお話した○○ですが・・・」

「○○さん?」


・・・忘れたのかな?・・・

しばらく間をおいて

「あー、○○さん。木材の話ですね。」

「今度の日曜日に会社の方に相談に行ってもいいですか?」

「今ちょっと忙しいんですよ。」

「では、ゴールデンウィークの間ならどうですか?」

「ちょっと待ってね・・・・5月4日なら家にいますよ。」

「では5月4日の午前中に伺います。よろしくお願いします。」



というわけで、自分で書いた図面と木拾い表と、あの模型を持ってSさんの会社に出かけていった。

今度は建築確認申請のときのような役所ではなく、現実に家を建てている業者に図面などを見てもらうのだ。

しかも、建築確認申請では使わなかった「伏図」や「軸組み図」、「矩計図」などの実践的な図面だ。
図面や木拾い表を見て、こんなのダメだ! とボロクソに言われたらどうしよう・・・

図面と木拾い表をSさんに見せて、

「自分で墨付け刻みをして家を建てたいんです。材料は、贅沢をいいません。強度さえ問題なければ、節があろうがなかろうが気にしません。と告げた。

さあ、どういう反応があるだろう?


しばらくの間、図面と表を見ながら話をしていたが、やはりそれだけでは話がしにくいことがわかった。

「ちょっと待ってください。」

私は駐車場に戻り、クルマの中から例の軸組み模型を持ち出して、ここぞとばかりにSさん宅に持ち込んだ。

模型を見たとたん、Sさんは

「うわー! 凄いですね。それ、作ったんですか!」

「はい。一週間くらいかかりましたよ。」

「いいなあ、これ。うちでもこんなの作ろうかな。」



Sさんは模型を見て、いたく感心したようだった。

場の雰囲気が急に華やいできた。

模型の威力は素晴らしい!

「ここがリビングですか。」

「いや、リビングは2階のここですよ。日当たりも眺めも良さそうだし。」

「下屋(げや)のタルキはこんなに上げたら、2階の窓が高くなって眺め悪いじゃないですか。もっと下げたほうがいいよ。」

しばらく模型を見ながら話した後、「木拾い表」をチェックしてもらった。

「土台は青森ヒバとなっているけど、青森ヒバは高いよ。ベイヒ(米桧)の4寸角にしたらいい。4メートルもので1本3200円だから。水にもシロアリにも強いし、耐久性はあるから。」

「横架材(おうかざい=横に使う材木)は、なんで4メートルと3メートルのものがあるの?」

「胴差や台輪の配置図を書いてみたんですよ。そしたら3メートルで済む部分があるんです。」

「横架材は普通4メートルだよ。3メートルは柱材だ。4メートルと3メートルが混じっていたらややこしくなるから、全部4メートルにしたらいい。余った材料は枕材にしたりいろいろ使えるから。」


模型を見ながら・・
「母屋(もや)のタルキ当りの欠きこみは、こんなに大きく欠きこんだらまずいよ。」

「あっ、それは模型だから深く欠いたんですよ。実際は違います。」




こんな感じのやりとりが続いた後、Sさんがつぶやいた。


「うーん、これなら素人でもできるかもしれないな・・・」

    そうだろう!!・・・私は心の中でそう叫んだ。

墨付け・刻みは一般的に熟練の技術を持った職人しか出来ないと思われている。

それを素人がやって成功させるために、私なりに工夫していたのだ。

それはつまり・・・

  1. 家の形を単純な長方形にしたこと。
  2. 屋根の形も単純で一般的な「切妻」にしたこと。
  3. すべての梁は「継ぎ手」を設けず、一本もので掛け渡す構造にしていること。
    (梁の「継ぎ手」をつくるのは、刻みの中でも難しい部類に入るので、そういうことは避けた。)
  4. 「胴差」「軒桁」などの横架材は、距離が長いためどうしても「継ぎ手」を必要とするが、仮に継ぎ手の加工精度が悪くても構造上弱くならないように、横架材を二重構造にしたこと。
    つまり、各柱間の胴差や軒桁はそれぞれ2本掛け渡してあり、一方に継ぎ手があっても、もう一方は継ぎ手がない・・というふうにしてある。
  5. 柱の上部に梁を乗せ掛ける「仕口」を、一般的な「大入れ蟻かけ」ではなく、「渡り顎」というものにしてある。

現在の住宅で一般的に使われている「大入れ蟻かけ」は、柱に乗っかっている部分の幅がわずか5寸(15ミリ)程度しかない。

これが「ずれて」脱落しないように「蟻」と呼ばれる仕口になっているが、それだけでは弱いので、羽子板ボルトで緊結して引き寄せているのだ。

刻みの精度が悪ければこれでは不安だし、羽子板ボルトだって、木材が乾燥すればすぐに緩んでしまう。

その点「渡り顎」ならばしっかりと組み合わさっていて、ずれて脱落なんてことは考えられない。

私は家の構造・軸組みを出来るだけ単純化して、大事なところには木材をダブルで使って安全策を講じるなど、加工精度が多少悪くても重大な欠陥を生じないように工夫してきたつもりだった。

実際に建築にたずさわっている人の目から見て、自然に「これなら素人でも出来るかもしれないな。」という言葉が出たことで、非常に自信がわいてきた。

そして、話せば話すほど、Sさんも我が事のように興味がわいてきたように見えた。

そりゃあ、そうかも知れない。

相談に乗るとはいっても、所詮素人のやることだから、はじめは本気で考えていなかったとものと思われるが、
模型を見せられて、素人でも出来そうな軸組み構造にしていることが分かったため、俄然現実味が増して、その気になってきたものと思われる。

人は、「面白いこと。痛快なこと。」が大好きなのですよ!(^^)v

Sさんとのやりとりは、あっという間に2時間が過ぎてお昼になってしまった。

「お昼を取ってあげるから、何がいい?」

「いや、申し訳ないですからいいですよ。」

「遠慮しないで食べていけよ。」

「そうですか。ではチャーハンがいいです。」


Sさんは奥さんに、

「チャーハン大盛りとラーメン取ってくれ!」

出前が持ってきたチャーハン大盛りとラーメンは、全部私の分だった!!


12、木材が家に来た!

Sさんから木材を買うことになったが、Sさん自身が製材所を経営しているのではなくて、所属している協同組合などから手配するということだった。

材料の大半は地元のスギ材だ。 土台には米桧、梁には米松を使う。

数日後、Sさんから見積もりが来た。

家一軒分の構造用木材全部で78万円
(タルキ、根太、大引き、筋交いの分は含まず)

  ・・・そんなものなのだ。

私の家の例でいう限り、家一軒分の構造材そのものの金額なんて、筋交いまでいれても百万円そこそこだった。

床の間に凄く立派な銘木を使おうなどということでもない限り、「木材は高い」というのは当たらないと思う。

家一軒の材料のうち、最も経費がかかるのはキッチンや風呂などの設備面である。

木材の代金なんてたかが知れている。

だから、構造を支える木材をケチるのは止めたほうが良いですよ。


ちまたで建築中の家を見かけると、通し柱(1階から2階まで一本で通す柱)を普通の柱と同じ3寸5分(10.5センチ)で造っていることがあり、驚いている。

通し柱を3寸5分では心もとない。

仮に通し柱が6本あったとして、それをすべて4寸にした場合の材料の金額差は2~3万円程度。
そんなもんで家の強度が違ってしまうのだから・・・

でも多分、通し柱とその他の柱の太さを同じにするということは、木材代金のことよりも、その後の壁工事の手間が楽になるというメリット(工務店側の)を考えてのことでしょうが・・・
 (同じ太さで面が揃うと、壁工事が楽なのです。)

システムキッチンの扉の「グレード」を1ランク下げただけで数万~十数万円安くなることを思えば、表面的なことよりも構造材にお金をかけたほうがいいと思いますよ。


さて、刻みの順番からして、横架材(おうかざい=横に使う材料)からはじめて、次に柱・通し柱と進むため、まず横架材の分が家に届けられることになった。

    あの幽霊屋敷のような借家で、材料が運ばれてくるのを待った。

土曜日に来るそうだ。何時頃になるかはわからない。

土曜日、朝から落ち着かなかった。

妻も落ち着かない。二人でそわそわしながら待っていた。

やたらにお茶ばかり飲んでいる。

トラックの通る音がするとドキッとして外を見る。

どうしてこんなに落ち着かないんだろう?

「ついに材料を買ってしまった。刻みをはじめたものの、うまくいかなくて、こんなに膨大な量の木材を持て余してしまったらどうしよう・・・」

そういう不安が心のどこかにあるためか・・・

待ちくたびれた午後2時頃、ついにトラックが来た!

おぉー! 思った以上にどっさりと積んでいる。

さて、これを荷降ろしするのだが、丁度いいところに電線が通っていて、トラックについたクレーンの操作が大変そうだった。

でもプロはさすが!  うまくギリギリのところを操作して、少しずつ荷を降ろしていく。

トラックが帰った後、庭には大量の木材が積まれていた。

これをすべて、家の中の使わない部屋に運び入れるのである。

とても古くて、とてもボロイ借家に住んだ成果が発揮された。

この借家で使っていない部屋が4つあるが、そのうち2つ、あわせて16畳を続きの間にして、作業スペース兼材料置き場にしたのだ。

床には畳の無いところがあり、板の上を歩くとミシミシして踏み抜きそうになるほど弱い。

今日届いた材料から数本、長いやつを何本か床の上に敷いて、その上に材料を置くことにした。

こうすれば荷重が分散されて、床が抜けることはない。


さーて、力仕事だ!

3寸5分角の4メートル程度のものは一人で大丈夫だが、梁材となると重くて、妻に一方を持ってもらって、二人で運び入れた。

「重いー!」

「もう少し、もう少し!」

「重いー!」


トラックからの荷降ろしに時間がかかったため、すぐに夕暮れになってしまった。

さらに、慣れない力仕事で妻もしんどそうだったので、材料の半分くらいを運び入れたところで、私は言った。

「今日はもう遅いから、残りを明日入れよう。」

すると、
「雨が降ってきたらまずいから、今日中にやってしまった方がいいよ!」

   ・・・ひぇー! やる気になってるよ!

自分の家の材料だと思うと、雨の一滴たりとも寄せ付けたくないのかな。

力仕事は大嫌いなくせに・・・

じゃー、今日中にやってしまえ!

暗くなるまで二人で頑張った。

男女二人の人力のみで、すべてを家の中に運び入れたのだ。

その数、およそ百本弱。

やれば出来るじゃん!!

・・というより、終わって見ればたいしたことなかったかな?


   「人力」は結構強いものですね。

13、刻み

材料を運び入れた翌日から、早速、墨付け・刻みの作業を開始した。

ワクワク・・・

本当は土台からはじめて、順に梁・桁とやっていくのが普通かもしれないが、私の場合ははじめてなので、一番単純で、少々失敗しても影響が少なそうな「母屋(もや=屋根のタルキを受ける部材)からはじめた。

墨付けには、さしがね、メジャー、墨つぼ、墨さしを使う。

刻みには、丸ノコ、ノコギリ、電動カンナ、ノミ、玄能を使う。

そういうわけで、刻みを始めるにあたって、はじめて電動の丸ノコやカンナを買った。(^^)v

しかし、刻みでホゾ穴を開けるためには「カクノミ」という機械があると便利だ。

というより、これがないとドリルでたくさん丸穴を開けてからノミで欠き取るということになり、やれないことはないけれど大変手間がかかる。

カクノミは木材を購入した先のSさんが貸してくれた。

Sさんのところでは、刻みは専らプレカットに出しているので、今時カクノミはあまり使わないのだそうだ。

この機械は、新品を買えば7万円くらいするので、とても有り難かった。

家一軒つくるなら、7万円くらい出して買ってもいいかな・・・とも思えるものだが、貸してくれる人がいるなら借りたほうがいい。


刻み作業は、家で出来る利点を生かして、平日でも朝早く起きてやっていた。

4時半頃起き出して顔を洗い、おもむろに作業開始。(^o^)┘

ほどなくして、カクノミなどの機械から発する騒音に包まれる。

 
  ギャーーン! ウィーーン!(←電動工具の音)

   ガン! ガン! ガン!(←玄能でノミを叩く音)

早朝から大騒音に包まれる。(^^ゞ

ふすま一枚隔てた隣の部屋では妻が寝ている。

ボロボロハウスのため隙間だらけで、音だけでなく木屑も隙間から隣の部屋に容赦なく侵入していく。

しばらくすると妻が起き出してきて、台所に避難する。(当然だ)

で、7時頃には作業終了して朝食を・・・そして出勤、という日常が始まったのだ。

私はそれまで手道具しか使ったことがなかったので、電動工具をはじめて使ったときは感動ものだった。

刃径190ミリの丸ノコがあれば、4寸(12センチ)の角材といえども、表裏の両側から切ることで簡単に切断できる。

手ノコだと硬くて大変な、節(ふし)の部分もものともしないし、正確に直角に刃が入ってゆくから精度も良い。

超硬チップの刃に取り替えたところ、木材に刃を入れてもほとんど抵抗を感じることなくスーッと入ってゆく。

しかも、切断面が、カンナでもかけたんではないかと思うほど非常にきれい

これは感動ものだ。

電動カンナも素晴らしい。

手道具のカンナをかける場合、木目が逆、いわゆる「逆目(さかめ)」に引いてしまうと木肌が荒れたりするが、電動カンナは(削る厚さが薄い場合には)逆目をものともしない。

しかも一度に最大2ミリも厚さ調整ができる。(音はうるさいけれど)



手道具しか使ったことがなかった頃には、家の構造材の刻みなんて別世界の話のように感じていたものが、電動工具を使ってみると、案外いけるかも・・・と思えてしまう。

刻みをはじめて一週間目くらいには、刻みをちゃんと仕上げることに確信を持てるようになった。

なんだ、案外簡単じゃないか・・・と (^_^)


休日も楽しい。

朝から晩までやっていても、仕事じゃないからいつ休んでもいい。

私は「三国志」が大好きなので、土曜日の昼11時からやっていた人形劇三国志の再放送時間になると作業中断して、作業場から木屑を服につけたまま茶の間に現れる。

休日も楽しい。

朝から晩までやっていても、仕事じゃないからいつ休んでもいい。

私は「三国志」が大好きなので、土曜日の昼11時からやっていた人形劇三国志の再放送時間になると作業中断して、作業場から木屑を服につけたまま茶の間に現れる。

「もー! 木屑を落としてきてよね!」と妻

「まあまあ」と私

センベイをバリバリ、お茶をがぶがぶ

そしてテレビを見終わるとまた作業場に戻っていく。

茶の間の座布団の上には木屑が・・・(^^ゞ



今から思えば、なんて恵まれた作業をしていたんだろう!

家に居ながらにして、誰に指示されるわけでもなく、思う存分木材を切ったり削ったりできるなんて!

仕口や継ぎ手の加工がなされた木材が、作業場の一角にどんどん積み上げられていくのを見ると、益々やる気が沸いてくるのだった。


刻みをはじめて1ヶ月ほど過ぎたある日の夜、お風呂の掃除をしようと腰をかがめた瞬間、腰に痛みが走った。

次の瞬間、立っていられないほど痛くなり、そのまま床に丸くなってしまった。

やってしまった! 腰痛を発症したのだ。



椎間板ヘルニアの私は、重いものを扱うときは要注意なので、刻み作業のときも当然注意してやっていた。

でも、その反動で気が緩んだのか、風呂掃除なんていう日常のことで腰痛を発症してしまった。

立ちあがれない!

なんとかクルマに這っていき、妻の運転で病院へ行って注射をしてもらった。


翌日、仕事には行けなくて一日中布団の中。

次の日も、その次の日も布団の中。

出張の予定が入っていたがキャンセルになった。



4日目、久しぶりに出勤したら「係長は刻みをやりすぎて腰を痛めた。」ということになっていた。

「いや、そうじゃない。風呂掃除をしようとして痛めたんだ。」

とは言ったものの、誰も信じない。

腰痛は4日ほどで回復したが、刻みはしばらく控えることにした。用心のため。

これで、約1ヶ月ほど作業中断となってしまった。

でも焦ることはない・・・

こういう機会に、休日は妻と買い物したり、それなりに楽しめばいい。



遮二無二突っ走るだけでなく、休むときには真剣に休む。

家を手作りするのは長丁場なので、焦らずにバランスよく生活全体を考えることが必要だな・・と、この時思った。

腰痛になったことは、長い目で見れば「良かった」かも・・・

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さて、突然なぜかクルマの話ですが・・・

もともと我が家のクルマは、中古で買ったスバルレオーネでかなりポンコツだったが、家づくりを始めたことによって、さらにワンランク上(下?)のポンコツに乗る運命となった。

前のクルマ(レオーネ)がついに寿命を感じるようになった頃、買い替えを考えてみると、どうしても「新車」という線に行かないのだ。

なぜか?

水道工事屋さんやガス工事屋さんのクルマを見れば、商売道具がぎっしり積み込まれているのがわかるとおり、今の私は、家一軒の建築を手がける業者の端くれみたいなものだから、やはりクルマには道具・工具を積んで走る機会が多い。

いや、道具類よりも材料を積む機会が多い。

主な建築材料は、製材所や建材店に注文して現場にトラックで届けてもらうことが出来るが、コンパネが2~3枚足りなくなったとか、作業シートだの袋セメント1袋だの、金物類だのなんだのかんだの・・・・

そういう細々したものを買って来たり、現場に運んだりする機会はとっても多いのだ。

それなのに新車だと?

 いやいやトンデモナイ! ポンコツ車で十分!

新車では勿体無さすぎる。

とにかく多少汚れようがぶつけようが気にもならない・・というクルマが理想なのだ。


で、とある筋からわずか3万円でクルマを仕入れることができた。

15万キロ以上走っているスバルレオーネのライトバンである。(つくづくレオーネと縁がある(^^ゞ )

味もそっけもない業務用ライトバンだ。



ところがこのクルマがとても役にたった。

サブロク版(3尺×6尺)の合板がすっぽり入ってしまう大きさだから、ホームセンターで買える大抵のものは運べてしまう。

理想を言えばトラックがあると便利だ。軽トラでもいい。

でも普通のサラリーマンはトラックは持っていない。
(・・・のが普通ですよね・・・)

でもライトバンなら、トラックの代用は多少こなせるし、雨が降っても材料を濡らすことはない。

しかも、安い中古のポンコツだから、いくら汚しても気にならない。

まさに手作り建築をやろうという人には最高のクルマとなった。


幽霊屋敷のような古ーーい民家に住み、クルマはポンコツ業務用ライトバン (-_-;)

妻のフマンは高まる一方だが、当の本人は最高の環境が整ったと思っている。


このクルマは、ある雨の日にエンジンがなかなかかからず、何度か試した後やっとかかったと思ったら、パン!と乾いた音がしてボンネットから煙が吹き上がり、そのまま止ってしまった。(@_@)

それ以来、我々はこのクルマをパン車と呼ぶようになった。

・・・かえって愛着が沸いてきた。

パン車は、家づくりの全般にわたりよく活躍してくれた。

人からは、「○○さんは腐れクルマに乗っている。」と噂されたこともあったが、全然気にならなかった。



「汚れても傷がついても気にならない」というのは、ひとつの「価値」かも?

パン車はその意味では大変価値あるクルマで、大活躍の殊勲賞だったのだ。

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