やや大型の壁面収納棚を自作する
DIYで作った壁面収納棚です。
巾が1メートル75センチ、高さ1メートル50センチ、奥行き40センチあるので、けっこう大きなものです。なにしろ収納すべきもの(ガラクタ?)がたくさんあるので(^^ゞ
なるべく安い材料で、ヤボッたくない感じ・・・ という目標に近づくため、あれこれ考えました。
これは割合簡単に出来る作り方なので、出来上がるまでの過程を順番に説明します。
材料費は全部で1万4千円でした。(平成20年代のことです。)
材料費の内訳
これを作ったのは平成20年代でしたので、令和の現在は木材をはじめとした物価高騰により、上記の1.5~2倍くらいかかると思います。
1、設計してみる
この部屋の窓の下の壁に、壁面収納棚を作ろうと思います。
大きさは、巾は約1間(180cm)、高さが約150cm、奥行き40cmくらい。
1、まずはサイズを決める
棚と棚の間をどのくらいにするかを、まず決めなくちゃ! ということで、中に収納するものの大きさって、いったいどのくらいだろう?
代表的なもののサイズを測ってみると・・・
まっ、大抵のものは高さ45cmあれば十分ということが分かったし、全体の高さが150cmなので、高さを3分割して棚板をつけることにしました。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
実際にモノを収納できる高さの合計は、全体の高さから、それぞれの棚板受け材などの厚さを引いた値になるので、
1500 - 89 - 43 - 43 - 43 - 18 = 1264ミリ
これを3等分すると 421ミリになってしまい、これでは少し低いので、1段目と3段目を450ミリ確保して、残りを2段目にすることにしました。
収納空間の高さはそれぞれ、1段目=450 、2段目=364 、3段目=450ミリ に決定!
2、材料の検討
収納棚は面で囲われた家具なので、材料のほとんどは、棚板、天板、側面板、扉などの面になるもの。
なるべく安くて、そこそこカッコ良くなる材料は何がBestか? 面になる材料の候補について、価格や長所・短所をあげてみると、以下のようになります。
OSB合板
合板類の値段が高騰している中にあって、同じ厚みならおそらく一番安く買える。
9.5ミリ厚のサブロク版(910×1820ミリ)が約1000円。
欠点はやはり見た目。いかにも下地っていう感じ。でも見ようによっては面白い模様に見える。
合板なので、切断面の小端・小口はそのままでは醜い。(何かで隠せば使える。)
シナランバーコア合板
合板とはいえ、表面はシナなので美しい。
塗装もしやすく、ウレタンニスを塗ればとても綺麗になる。切断面の小端・小口は、シナテープを張れば綺麗に隠せる。
でも最低15ミリ厚からとなり、強度は十分だけど、サブロク版で3200円程度と、合板にしては高い。
それに、表面が綺麗といっても、均一すぎて面白みはない。
パイン集成材
節有り、節無しの別はあれど、総じて無垢のパイン材に近い風合いで、無垢材よりずっと扱いやすい。
切断面も、もともと無垢材を張り合わせたものなので、何の処理をしなくても綺麗。
価格は、厚さ18、巾400、長さ1820なら2000円以上するため、サブロク版に換算すると4500円近くなり、一番高い。
パイン無垢材、またはSPF無垢材
SPFというのは「スプルース、パイン、ファー」の略で、ツーバイ材に使われる材料の総称。だからホームセンターに置いてある2×4材、1×4材などがコレ。
材料としては、木の風合いがあって切断面もそのままで問題なく、一番好みではあるけれど、こういうもので巾400ミリの板を作るには、現実には1×10材(=巾235ミリ)くらいの板を2枚はぎ合わせなければならず、正確にやるには木工の基礎知識と、それなりの道具が要る。 もちろん手間も・・・
価格は、厚さ19ミリの1×10材を使うとすると、サブロク版換算で2900円前後となり、シナランバーコア合板程度。そして重量も重くなる。
それに、無垢なので死節やヤニ、割れなどの欠点部分をのぞくと、実際に使える部分が限られ、本当の価格はもっと高くなる。
さらに、箱物家具に使うとなれば、無垢材特有の「収縮」や「反り」の対策をしておく必要があり、これも木工基礎知識と手間が必要。
なにかとメンドウですな~
しかし、木肌の風合いはとても良い。
かまち組み
「かまち組み」というのは、無垢材などで枠組みを作り、その中に薄い板をはめ込んで面を作ることで、重量も軽く、材料費をあまりかけずに作れる方法。
強度的には外側の枠でもっているため、中にはめ込む板はペラペラの薄いものでも使えるし、板の種類によってイメージも様々変えられる。
価格的にも、材料の量自体が少ないこともあって割りと安くできるし、木材の収縮に伴う変形の影響も少ない・・・ということでメリットが多い。
作る手間はかかるけど(^_^;
こういう長所・短所を勘案し、今回の壁面収納の材料は以下のようにすることにしました。
棚板
OSB合板9.5ミリ厚にする。安いから・・
ただし強度の補強と、切断面を隠す目的で、端っこに無垢材(ツーバイ材)を併用する。
OSB合板は見た目がいかにも下地だけど、今回は扉付き収納であり、棚板はいつもは扉の裏側に隠れているので、まぁ、いいや・・ということで (^^ゞ
天板
パイン集成材とする。なんたって見えるところだから。
扉と、側面の板
かまち組みとする。中にはめ込む板は、厚さ4ミリの薄いシナベニヤ。安くて軽くて狂いが少なく、メリットが多い。
面以外の枠材は・・
安くて手に入りやすいツーバイ材を使うことにして、
主に、厚さ19ミリの1×4材(ワンバイフォー)と、1×4材を縦に半割りしたものを使用。
1×4材は巾が89ミリなので、それを縦に半割りすると、ノコ刃の厚さが3ミリとしても、(89 - 3)÷2 = 43ミリくらい。
3、作る手順のイメージ
賃貸アパートと違い、自宅の作りつけ収納なので、壁面にビス類をバシバシ打って固定できるのがいいところ。
だから、壁面側の棚板受け材は、直接壁にビスを打って固定し、その上に棚板を乗せることにします。
↓↓↓
棚板を壁面に固定し、前方からは、棚板の前面を支えるための柱になる板を取り付ける。
扉は、棚板を支える支柱と支柱の間にはめ込むため、支柱の厚さと同じ厚みにする。
側面には、扉と同様「かまち組み」にしたパネルを取り付ける。
・・・という感じかなぁ
2、本体を作る
まずは棚作り。
棚板は厚さ9.5ミリのOSB合板なので、厚さが薄く、そのままでは弱いので、前後に受け材をつけることにします。でも後ろ側は、受け材の上にOSB合板を乗せて、上からスリムビスで固定するだけでOK。
前側は、OSB合板の切断面を隠すため、受け材を、合板の厚み分欠きとってから乗せることにします。
前側の受け材は、2×4材を半割りしたものを使いました。
こういう欠き取り加工は、テーブルソーを使うと比較的安全・正確に出来るんですが、テーブルソーが無い場合は、丸ノコに平行定規をつけ、ノコ刃の出具合を調整してからカットすることになります。
私はテーブルソーを持っているので、こういう加工はすべてテーブルソーで行なっています。楽で便利で正確で、いいですよ~(^^)
2×4材のサイズは 38×89ミリなので、これを半割りすると、ノコ刃の厚み分を3ミリとすると、(89-3)÷2=43ミリになります。
だからこの壁面収納棚の棚板受け材や支柱材は、2×4材や1×4材をそのまま使うか半割りするかなので、サイズは皆89ミリか43ミリになっています。
一番下の受け材は直接床面につくので、少し高さがあったほうが良いだろうということで、1×4材を使いました。巾89ミリをそのまま使います。
壁面に、棚板受け材を固定する高さを、マーキング。
2断目、3段目の高さを印した適当な板を壁面にあてて、印をつけてます。これで床面からの高さが一定(水平)になるはず。
受け材は、壁の中の間柱にビスを効かせて固定します。間柱が入っている位置はどこだろう?
自分で作った家なので、こういう時のために、巾木などに間柱位置の印をつけてるから、楽勝です(^^)v
一番下の棚板を取り付けて・・・
ただし、壁の一番下に『巾木』があるので、巾木に当たる部分は、あらかじめノコギリで切り取っておきます。
両サイドの支柱を、一番下の棚板受け材に固定して・・
ちなみに、棚板は支柱側から棚板受け材にビス固定しますが、それだけでは弱いので、あらかじめ支柱に適当な補強材を取り付けておきました。
棚板を、補強材の上に乗せかけることで、かなりの荷重に耐えるはず。
残りの棚板と、天板を取り付け。
それぞれ、支柱側から棚板受け材にビスを打って固定
天板は、少し前に張り出してつけました。扉よりも1cmくらい前に出るように・・
最後に、中央の支柱を取り付けます。
これらのビス穴は後でダボ埋めして隠してしまうので、まずはφ8ミリのダボ穴をあけてから、スリムビスを打ち込みます。
壁面収納棚本体の出来上がり。
あとはこれに、8枚の扉と、右側面パネルを作って取り付けます。
3、扉を作る
扉の材料のメインはツーバイ材。その中でも、厚さが19ミリのワンバイ材(1×4材)を使うことにしてるんですが、ツーバイ材って、かなりのものが大なり小なり捩れているんですよね(-_-;)
私は手押しかんな盤と自動かんな盤を持っているので、それを使えば捩れを修正できますが、厚さが薄くなってしまいます。
今回はもっと簡単に作る計画なので、捩れを直すのではなく、そのまま使うことにします。まずは捩れているものと真っ直ぐなものを仕分けします。
一般的に「かまち組み」の扉はこんな構造になっていて、縦横の枠材に溝を切り、その溝の中に「鏡板」と呼ばれる薄板をはめ込んで作ります。
枠材どうしは固定しますが、枠材と鏡板は接着しないので、枠材が無垢の木材であっても湿度変化で自由に伸縮できるから、扉が歪んだり壊れたりするのを防げます。
縦枠は細く、横枠はそれより太くするほうがデザイン的にもカッコイイので、今回は縦枠には1×4材を半割り、横枠には1×4材をそのまま使うことにしました。
縦枠のほうが長いので、真っ直ぐな材料は縦枠用とし、捩れている材料は横枠に使います。そのほうが誤差を少なくできるから。
捩れている材料はなるべく短くて小さなパーツに使うということですねー♪
1×4材を縦に半割りするのに、私はテーブルソーを使いました。これが一番楽で正確。
テーブルソーが無い場合は丸ノコに平行定規をつけて切れますが、材料が細いので、作業台に工夫が必要です。
ホームセンターのカットサービスでもやってくれるんではないかと思います。
最初に縦枠の材料を半割りにして、2枚あわせて正確な巾を測ります。
その後に、扉全体の巾寸法から縦枠2枚分の実際の寸法を差し引いた長さで横枠をカットすれば、設計どおりの寸法で扉ができますよ~
大抵の箱型の工作では「巾」を先に加工して、できた寸法をもとに「長さ」をカットしたほうが、うまくいくようです。
縦枠から横枠へビス止めするため、縦枠の巾の半分くらいまで、あらかじめダボ穴をあけておきます。
スリムビスを使うので、穴はφ8ミリでOK。
ボール盤に冶具(ストッパー)をクランプで固定して穴あけすると、穴がセンターからずれることなく開けられます。
丁番を取り付け箇所には、丁番の厚み(4ミリ)分、掘り込みをするんですが、1枚1枚やっていると時間がかかるので、8枚の扉にまとめてやりました。
トリマーを使って掘り込みできますが、今回はテーブルソーに溝きりカッター刃を取り付けてカット。速く正確にできます。
さらに、縦枠・横枠それぞれに、鏡板のベニヤが入る溝を掘り込み。
4ミリのシナ合板をはめ込むので、溝の巾は4ミリ・・・なんだけど、材料を捩れたまま使うときはまたは溝巾は広目にしたほうが良いようで・・・(遊びを大きく取るために)
トリマーを使って溝切りできますが、これもテーブルソーでやりました。速い!
縦枠と横枠をビスで固定。
このとき、横枠はやや捩れた材料なので、横枠の小口(=切断面)を無理に縦枠に合わせようとすると、捩れた扉になってしまいます。
捻じれた材料で扉を作るウラワザ
きちんと平面が出ている台の上に縦枠と横枠を置き、横枠を無理に押し付けることなく、あるがままに縦枠と固定してしまいます。
横枠が捩れていると、どちらかのカドが出っ張ってしまうので、そこは後でカンナをかけてやればキレイに平らになります。
こうすると扉全体が捩れることはなく、収納棚本体に取り付けて開閉しても、隙間は出ないです。
上のイラストは大袈裟に描いてるので、実際こんなに出っ張ることはないですけどね(^_^;
イヤ・・・本当は個々のパーツをすべてきちんと捩れを取り、平面と直角を出してから使うのがセオリーなんですが、まぁ、これはDIY的・実用的裏ワザってことで・・・(^^ゞ
かまち組みの扉が8枚
取りあえず、本体に置いてみた。
丁番がついていないので、高さ位置はズレてる(だから上が開いている)けど、巾方向の寸法チェックはできます。
やはり実際に置いてみると、微妙に寸法が合わないところがあるものです (^^ゞ
扉どうしが重なってしまう箇所に、現物合わせで鉛筆でマーキングしています。
さっき書いた鉛筆のラインまで、カンナでシコシコ削って調整。
ついでに扉の周囲4面をきれいに削って仕上げをば・・・
ビス穴を埋めたφ8ミリのダボの突起をカットしています。
ちなみに、ダボのカット専用のノコがあり、これには『アサリ』がついていません。
アサリがないので、板の面にノコ身をピッタリあてて切るだけで、ダボの先端は板の表面と完全にツライチになります。 板の表面にキズがつくこともなく、カンナで仕上げる必要もなし。こりゃー便利!
塗装は、オスモカラーの「パイン」を使いました。
オスモなどのオイル仕上げの場合は、塗ったあとにウェスで拭き取ります。
屋外で乾燥させています。
扉への塗装は本来、反り防止の上からも表裏両面にするものなんですが、今回はまぁ自宅用だし、塗料ももったいない(笑)ので、表面だけにしました。
そのため境界線にあらかじめマスキングテープを貼っておきます。
市販の取っ手をつけて・・・
扉の出来上がり
かまち組みなので、一枚板の扉より軽い
4、組立て・仕上げ
扉の取り付け作業中♪ やっぱり家具作りは組立て段階が一番楽しいですな~
昨日作った扉を本体に取り付けるんだけど、じつはこれが意外にムズカシイ・・
扉に丁番(蝶番)を取り付けるのは簡単だけど、丁番を本体側に取り付けるときって、扉を開いた状態でしかビス打ちできないので、よっぽどうまくやらないと正確な位置に決まらず、扉がずれる ⇒ 開閉がうまくいかない
スライド丁番(蝶番)を使えば、あとで調整できるから問題ないけど、スライド丁番が1個400円~するのに対して、普通の丁番は1個70円くらいで買えるので、なるべく安く作りたいDIY派としては、できれば普通の丁番で済ませたい(^^ゞ
以前は毎回、丁番の取り付けには苦労させられたので、今回は少し策を弄してみました。
扉側に丁番を取り付けたら、本体に取り付く面に両面テープを貼り・・・
そのまま扉を本体に添わせて静かに横移動。
取り付け枠についたら強く押し付け、両面テープがくっついてから手を離すと、ちゃんと正確な位置に丁番がくっついて自立している~♪
あとは丁番の穴の中心にキリを刺し、そこにビスを揉みこめば出来上がり。
位置あわせが簡単正確!・・・・なんちゃって、じつはそんなに簡単ではなかったです(-_-;)
扉を本体枠に接触させただけでは、両面テープはくっついてくれませんでした。丁番は、閉じた状態でも2枚の板の間には少し隙間があるので、両面テープを押し付ける力は働かないってことですね。
だから実際には、片手で扉を持ったままもう一方の手を突っ込み、指で丁番の板を枠に押し付けたりしてナントカなった・・・という感じ。
全部取り付けてから気がついたけど、丁番の2枚の板の間に薄いベニヤ板とかゴム板なんかを挟んで、糊で仮止めしてから押し付ければうまくいくかも? 今度やるときは試してみます。
8枚の扉が全部ついて、一応完成!
・・・のつもりでしたが、妻の反応は
なんだか殺風景・・・下駄箱みたい。(-_-;)
一応これで収納棚としての機能は果たしているんですがね~。 やっぱり機能だけじゃなくて『楽しさ』もなくちゃ!
そこでもうひと仕事して、賑やかにすることにしました。
図書館から借りてきた動物イラスト集を参考に、板にカーボン紙を使って絵を描いています。
バンゾソーに3ミリのブレードをつけ、糸鋸みたいに切り抜き・・・
動物キャラたちが切り揃いました。
まず、エナメル絵の具の『ホワイト』を全面に塗り・・・
次に、それぞれのカラーを上塗りし、サインペンで細部を描いて出来上がり。
うーん! 収納棚とは別世界の、アニマルランド工作だ~
でも楽しい・・・(^^)
これらは、扉の裏側からネジで固定しました。
ハハハ・・・
各扉に、それぞれの守り神が納まりました。
猫のエサ缶はどこにしまってたっけ?
猫の部屋に決まってるジャン!
・・・なんていう風になると面白いかな(^_^;
氏家誠悟(seigo uziie)
2004年からこのサイトを運営している個人です。自分で家2棟、小屋2棟をセルフビルドしました。「自分でわが家を作る本。」の著者です。
自分で住処を作れるようになろう!
DIYで本格的な木造建物を作る方法を、動画で詳しく解説したDVDです。 私の作品です。
ご自分で家を建てるために、きっとお役にたつと思います。