単管パイプでウッドデッキの基礎を作る
ウッドデッキの根太から下、つまり束や基礎の部分を、単管パイプで作った例をご紹介します。
( 施工は2020年)
木材は湿気で腐れやすいので、地面に近い部分を単管パイプにすれば有利かなと思ったことと、なんとなくウェスタンレッドシダー材よりも単管パイプのほうが費用的に安い気がしたからです。(実際はあまりかわらなかった)
施工の仕方や、普通のウッドデッキとの費用の比較についてもまとめました。
施工前と施工後
1カ所目
コンクリート土留めがされた駐車場(左)と、工房棟(右)の間は傾斜地になっていました。高低差が1m近くあったのです。
ここを水平にして利用するため、ウッドデッキを作りました。
これは単管パイプで基礎部分を組んでいるところです。
単管パイプの基礎の上に、木材で根太を組んでいきます。
ここから上部は、普通のウッドデッキと同じように床板を張って完成!
2カ所目
ここも、こんな感じでパイプを組んで、すべてのウッドデッキが完成!
自宅玄関を出て駐車場に行くにも工房に行くにも、ウッドデッキの上を歩いて行けるようになりました(^^)v
単管パイプ基礎のメリット・デメリット
やってみて感じた、あるいは推定するメリット・デメリットを挙げてみると・・・
メリット
一般に、地面に近い部分は湿気が多く腐れやすいわけですが、単管パイプだと木材と違って腐ることがない。
だから耐用年数はかなり長いのではないか・・と想像。
まあ、長い間には「錆」は出るでしょうけど、腐るよりは長くもつんじゃないかな・・・
あと、施工性の面でも、高さの調整が楽にできるし、柱(束)を立てる位置や高さも、けっこうアバウトでOK
上に乗せる木材の根太とデッキ材できちんと寸法を取れば立派にウッドデッキは出来上がるので、単管パイプ基礎の部分は、寸法的には大雑把でもイケルようです。
そういう意味では、敷地の高低差が大きい傾斜地のようなところには単管パイプ基礎が適しているように思います。
デメリット
単管パイプは見た目が無粋。
ウッドデッキ自体は木材でカッコイイけど、そこにメタリックなシルバー色の仮設パイプが合うか? ・・・という点はありますね。(^_^;
しかし今回の例の場合もそうだけど、単管を使うのは基礎の部分であって、下から覗き込みでもしない限り見えないので、実際にはほとんど気にすることではないように思います。
※ 普通のウッドデッキと比べて費用がかかるのでは? あるいは逆に安くつくか?・・・ これについては、比較検討してみました。⇒ 費用の比較
基礎の種類はどうするか?
単管パイプで柱(束)を立てる場合、どんな基礎を使うか・・・ということですが、私の事例ではこの4種類を使いました。
パイプの端部の柱用
1種類目 これは単管支柱ベース
単管パイプを立てるために作られただけあって使いやすいけれど、1個1500円くらいする高価なもの。 贅沢! しかも重い。
これは単管の位置が固定されてしまうので、すべての単管柱にコレを使うのは施工性の点からいっても不合理。
よってこれをメインに使うことはしません。
しかしさすがに専用ブロックだけあって安定感抜群なので、基準位置とか、長いパイプを挿し込むような箇所には重宝します。 今回は2個だけ使いました。
2種類目 メインはこれ。 ありふれた空洞ブロックです。 1個150円ほど
穴を掘り、砕石を突き固め、モルタルを敷いたうえにブロックを少しめりこませます。
モルタルが固まったら、空洞の中にパイプを立て、この状態でパイプ全体を組んでしまいます。
全体が組みあがったら、空洞の中にモルタルを詰め、パイプの位置が固定されるという仕組み。
こうなればもう、パイプは動かない。
この画像のは、ちょっとモルタル詰めすぎた(^^ゞ
パイプ中間の柱用
3種類目 中間地点の柱の根元にはコレ
穴を掘り、砕石を突き固め、モルタルを敷いただけのもの。 お財布にもやさしい。 (^^ゞ
中間の柱なので、位置を固定するのではなく、上からの荷重を支える役割だけもたせています。
※ 位置の固定は両端の2か所だけにすべき。 逆に、中間の柱まですべて位置を固定するとなると、施工が非常に面倒になっちゃいます。
平面的な広がりがあるので、位置が多少ズレても問題なし。
位置が固定されてるわけではないので、パイプ柱を立てる位置はアバウトに考えてもOK・・・いいですな (^^)
4種類目 たまたま在庫があったので、モルタルではなくピンコロ石を使ってみた例。
こちらもある程度面積があるので、位置が多少ズレても問題なし。パイプは位置固定されず、乗っかっているだけ。
単管パイプと根太の接合方法
根太材に2か所穴をあけ、番線を通して結び、締め込んでいます。
画像のはなまし鉄線だけど、ビニル被覆針金のほうが錆びなくてGood
一般に、木材と単管パイプの接合はタルキ止めクランプを使用・・・と、すぐに思ってしまうけど、タルキ止めクランプは1個250円くらいするし、個数も多いので、それだけでかなり費用がかかっちゃいます。
ビニル被覆番線で固定するのが経済的で、意外にしっかり固定されますよ。
水平を出す方法
建物を作る場合なんかだと、水を使って水平を出し、きちんと遣り方をかけて水糸を張り・・という手順を踏むのですが、小面積のウッドデッキは水平器を活用するだけで十分 (^^)v
垂直に立てたパイプ(柱)のクランプを緩めれば、高さはいくらでも(後からでも)調整できるのが、単管基礎のいいところ♪
だから、基礎の高さなんか全くテキトーでいいんです。この辺は普通のウッドデッキで作るよりさらに簡単。
この画像は、高さと合わせるよう、水平器で確認しながら調整しているところです。
既存のデッキと高さを合わせるため、こちらも水平器を使って確認しています。
長い距離では、何か真っすぐなモノに水平器を乗せれば良いので、この場合は単管パイプを使っています。
調整するほうのパイプは、根太とデッキ材の厚さ分だけ下げた高さにするので、←これを現物の端材で作っておくと便利
単管パイプを上下に平行に取り付けると、交差している単管パイプと同じ高さになります。
画像のAのパイプにもBのパイプにも根太材を乗せるようなときは、これで簡単に高さ合わせができるのです。
スパンはどのくらいが良いか
単管パイプでウッドデッキの基礎を組むとき、スパンをどのくらいにしたら良いでしょう?
つまり柱(束)をどのくらいの距離で配置するかということなんですが、これは私は何も資料を知らないので、自分の感覚でやっています。
実際にはスパンを1.5m程度にしました。 2m以上離したからといってパイプが折れる・・なんてことはないでしょうが、やはり2m以上にすると、人が乗ったときに少し撓む感じがします。
「たわみ」を感じない、しっかりした作りにするには、1,5m以内が良いと感じています。
一般的な、木材の2×6材を縦使いにする根太と、さして変わらないわけです。
必要な工具
単管パイプを切断するための高速切断機、カット面のバリを取るためのディスクグラインダー、クランプを締めるためのラチェットレンチが必要になります。
あと、水平器も必須ですが、少し長めのものが欲しいところです。
高速切断機
大きなホームセンターなら一日千円~でレンタルしているところもあるけど、末長くDIYを楽しむなら買っちゃうほうが良いと思います。
私が持っているのは砥石径355mmの高速切断機。 単管パイプも面白いようにサクサク切れますよ♪
この画像は、パイプは6mにもなると重いので、安定して作業するため、反対側をブロックやベニヤ板で高さ調整して水平を確認しながら、カットしているところです。
ディスクグラインダー
単管パイプを高速切断機でカットしただけだとバリが多いので、研磨用オフセット砥石を装着したディスクグラインダーでバリ取りする必要があります。
※ バリを付けたままだと手を切る可能性有り。
ラチェットレンチ
また、単管クランプのナットは17mmなので、レンチは17mmがついたものを使用
(画像のは19mmと17mmのセットのもの)
ただのスパナだと非常に効率が悪いので、ラチェットレンチの方が断然おすすめ。 てか、ラチェットじゃないと仕事になりません。
水平器
横に掛けた単管に水平器を乗せ、クランプの位置を上下させることで簡単に水平が出せるのが単管基礎の良いところ。
水平器は、精度を高めるためにはあまり短いのではなく、60cm程度は欲しいところです。
施工の様子(1か所目)
施工前の様子。
これは自作のコンクリート土留めで、その左側が駐車場になっています。
これからウッドデッキを作る場所は、高低差が1m近くある傾斜地なのです。
土留めのフーチン(ベースの部分)に、あらかじめアンカーボルトを埋め込んでおきました。
ここにウェスタンレッドシダー材を、住宅土台のように基礎パッキンをはさんで設置します。
これがウッドデッキ根太の一方の端部になり、高さの基準でもあります。
断面をイラスト化するとこんな感じ
ウッドデッキの『梁』となるよう、単管パイプを2列配置しています。
基準高さと水平になるよう、長い単管パイプと水平器で確認しながら、高さを調整します。 当然、最初に両端部を決め、次に中間地点をそれに合わせていくのです。
こんなふうに組みあがりました。
傾斜地なので、画像右側は柱が長いです。その場合は、転びにくくするため『根がらみ』として地面近くにも1本、単管パイプを取り付けます。
パイプの上に根太を乗せていきます。 根太は定番のウェスタンレッドシダー2×6
さて、根太と『転び止め』の配置ですが・・・
根太はデッキ材(床板)と直交しますが、転び止めは平行。
だから転び止めが根太より少しでも上に出てしまうとデッキ材がガタつくことになってしまいます。 同じ高さに固定したつもりでも誤差はでるもの。
そのため、転び止めは、あえて根太より数ミリ下げて取り付けるといいです。
これは根太と転び止めの固定作業。 ( 画像は上下を逆さまに置いています。)
転び止めの材を、厚さ4ミリのベニヤ板の上に置いています。 この状態でビス留めし、上下逆にすると、根太より転び止めが4ミリ下がった状態になるわけです。
ちなみに組みあがりが『十字』になるようにするには、こんな感じで『脇の下』のような位置からビスを打ってやります。
根太組み作業中
駐車場土留め側の下地は木材なので、ここは金物を使って根太を固定しています。
デッキ材取り付け作業中。 スペーサーを使って隙間を一定にしています。
完成! 駐車場の使い勝手が格段に良くなりました(^^)v
施工の様子(2か所目)
まず所定の位置に穴を掘り、基礎としてのブロック類を設置
単管パイプを組みました。
奥の方は1か所目の単管柱に固定しています。
根太組み中
既存のウッドデッキとの接合部分
根太受け金物を使っています。
工房玄関前は、高低差の関係から段差をつけました。
作業終盤になり、気が緩んでますね(^_^;
転び止めが一直線じゃなく曲がっている(^^ゞ
これですべて完成!
家の玄関回りが、と~っても!便利になりました。(^^)
費用の比較 ~ 普通のウッドデッキと比べてどうか?
ごく一般的な、つまり束の部分はウェスタンレッドシダーの4×4を使い、基礎石として羽子板付き束石を用いる・・・というウッドデッキと比べて、単管パイプ基礎のウッドデッキは、費用面で高くつくのか、はたまた安くなるのか?
例として、広さ 3.6m×1.5m、束の高さが50cmのウッドデッキを作る場合で試算してみました。
(材料単価は私の購入実績などを参考にしています。2012~2015)
1、普通のウッドデッキの場合
上のイラストのように根太を組み、束を配置するとします。根太のピッチは60cm、スパン1.5mです。
ごく一般的な配置だと思います。
単管パイプの基礎の場合でも、根太の配置とデッキ材は全く同じなので、違う要素だけで比較してみます。
違う要素は、束として4×4のウェスタンレッドシダー材と使い、その根元は羽子板付き束石を使う点。
この部分の材料費は・・・
- 4×4材が、0.5m×6本=3m ウェスタンレッドシダー材のエリート材 10feetを1本買えば足りる。これは「木工ランド」から送料込みで 4,850円
- 羽子板付き束石 単価700円×6個= 4,200円
- ステンレスコーススレッド24本と防腐剤少々 400円
- 合計 9,450円
2、単管パイプ基礎の場合
違う要素としては、木材の束と羽子板付き束石は用いず、下の概略図のように単管パイプを組んだと仮定します。(細かいこと抜きで、大雑把に考えて)
単管パイプのスパンは、経験上1.2mあれば十分と思われたのでこんな配置です。束の長さは、木材の根太の分を差し引いて約40cm
パイプの束が8本となり、その根元は、外周の4つが空洞ブロックとモルタルの基礎で、中間の4つが「穴を掘って砕石とモルタルを打つ」という超カンタン基礎です。
これに要する材料費は・・・
- 単管パイプ 3.6*2 + 1.5*2 + 0.4*8 = 13.4m 単価450円/m×13.4= 6.030円
- 単管用クランプ 単価 130円×12個= 1.560円
- 空洞ブロック 単価150円×4個= 600円
- モルタルの材料(セメントと砂)が、普通のウッドデッキ基礎より多く要する分の見込み 約600円
- 結束用に針金少々 約400円
- 合計 9.390円
・・・てことで、普通のウッドデッキ基礎と単管による基礎は、費用の差がほとんど無いみたいです。
差があるとすれば施工性かな~
個人的な感覚からいえば、傾斜地にウッドデッキと作るときは単管パイプ使用がやりやすいように思います。
あと、いかにも湿気がたまりそうなジメジメした場所など、木材が腐りやすそうな場所にも、単管基礎はいいかもしれませんね。
氏家誠悟(seigo uziie)
2004年からこのサイトを運営している個人です。自分で家2棟、小屋2棟をセルフビルドしました。「自分でわが家を作る本。」の著者です。
自分で住処を作れるようになろう!
DIYで本格的な木造建物を作る方法を、動画で詳しく解説したDVDです。 私の作品です。
ご自分で家を建てるために、きっとお役にたつと思います。