ロフト階段(互い違い階段)を自作
省スペースで設置できる面白い階段です施工 2016年
ロフトへの上り下りにはこれまで梯子を使っていましたが、やっぱり使い勝手が良くないので、階段にすることにしました。
しかし普通の階段だと、スペースを非常に多く取られてしまい、もったいないです。
ネットで調べたら互い違い階段というものがあることを発見。
スペースを多く必要とせず、ロフト階段としては非常に合理的!と感心し、早速、自分で設計して作ってしまいました。
うまく設計すれば、収納スペースを多くとることもできます。
この階段、歩くと最初はちょっと違和感あるけど、すぐに慣れます。なんか冒険的な要素もあって楽しい~♪
互い違い階段のメリット
互い違い階段とは、上の画像にあるとおり右足用ステップと左足用ステップがそれぞれ別々にあり、それぞれは段差がついている階段のことです。
互い違い階段 だと何が優れているのか? 普通の階段と比べみましょう。
普通の階段の場合はスペースを多く必要とする
一般的な 『ささら桁階段』 を例にすると、これは斜めに傾斜した 『ささら桁』 という部材で踏み板を支える構造になっています。
安全快適に上階に上るためには、上階までの高さと同じかそれ以上の水平長さが必要で、スペースを非常にたくさん取られてしまいます。
ささら桁の下の空間は、天井(?)が斜めになっているため、収納スペースとして有効活用するにも、ちょっと使い勝手が悪そう。
引き出し階段でもスペースを多く必要とする
階段下を有効利用するのが、昔の日本家屋によく見られたという引き出し(抽斗)付きの階段
部材はすべて水平と垂直で組み上げているので、デッドスペースが少なく収納には便利だけど、やっぱり階段全体では大きくスペースを取られてしまいます。
そこで互い違い階段の登場 (^o^)┘
引き出し階段を『右足用』、『左足用』と2つ作り、両方を抱き合わせると互い違い階段になります。 当然、左右の踏み板高さは違っています。
それぞれの引き出し階段は、1段の蹴上げ(イラストのH)が通常の階段の2倍もあるため、単独ではとても上りにくいんですが、
両方抱き合わせることで、1段の蹴上げが普通の階段と同じになるのに、階段全体の水平距離は普通の階段の約半分で済むという優れもの。
スペースをかなり節約出来てGood!です。
梯子ならば、登るために両手を使わなければならないですが、互い違い階段は、狭いとはいえ一応「階段」ですから、物を持って上り下りすることも出来ちゃいます。
でもこれじゃあ、上るときに膝がぶつからないか? 下るときに怖くないか? という疑問はありました。
実際に歩いてみると、最初はやや怖くて、変な感じがしましたが、すぐに慣れて快適に使っています。
膝は、ぶつかりそうでぶつからない・・という絶妙なところですね(^_^;
互い違い階段の設計
いざやってみると、けっこう難しいデス(^_^;
アタマを捻り捻り、なんとか JW-CADで図面を書きました。図面がないと、とても作れません。
設計のポイント
普通の階段と違い、斜めの部材や斜めに接合する箇所もないためその点は簡単ですが、以下の点に注意しながら設計する必要があります。
- 蹴上げの高さ、踏み板の巾ともに、すべての段が同じ寸法になるようにする。決して途中で変えたりしない。
(寸法が終始同じでないと、歩いたときに感覚が狂って、踏み外す危険が高くなる。)
- そのため、1段の蹴上高さは、階段全体の高さの整数割りとする。
今回の場合、全体の高さが2,453mmだったので、1段の高さは223mmとしました。
223×11段=2,453
- 現場の状況を勘案して最適な寸法を考える。
(この現場は出窓の左側カーテンにかからないように、なお且つ、既存のコンセントが隠れないようにしました。)
- 材料は、狂いの少ない集成材を使う。
厚さは余裕をみて36mmにしました。 実際には30mmでも十分いけると思います。
- 収納スペースをなるべく多く取れるよう、板の配置を考える。まず中央付近にメインとなる大きな四角を取り、そこに肉付けするような手順で設計する。
階段の蹴上げと踏面の寸法
なお、当然ながら関係法令は守ります。 階段の蹴上げ及び踏面の寸法は建築基準法施行令で最低基準が決められているので、それより安全側の寸法にします。
- 蹴上げ(けあげ) : 階段1段の高さのこと
- 踏面(ふみつら) : 階段1段の水平面(足が乗る部分)の奥行きのこと
建築基準法施行令では
階段及びその踊場の幅並びに階段の蹴上げ及び踏面の寸法は、次の表によらなければならない。
出典:建築基準法施行令第二十三条
ただし、(中略)住宅の階段(共同住宅の共用の階段を除く。)の蹴上げは二十三センチメートル以下、踏面は十五センチメートル以上とすることができる。
とあるとおり、蹴上げは23cm以下、踏面は15cm以上にします。
実際には、この最低基準で階段を作ったらとても急な怖い階段になってしまうので、これより余裕を見た方が良いです。
寸法図
実際に作った互い違い階段の、各部の寸法は以下のとおりです。
実際に上り下りするときの1段の高さは
187 ∔ 36 = 223 ミリ
ステップの奥行きは 250 ミリ
蹴上げは187+36=223mmで、約22cm 踏面は25cmになりました。
踏面は充分ですが、蹴上げは基準以内ではあるものけっこう急です。スペースを節約するには段数を少なくする必要があるため、このようになりました。
しかし踏面が充分あるため、怖い感じはしません。
互い違い階段の作り方
階段を作るのはDIYの中でも難易度が高い部類に入るのですが、それは『ささら桁』のような『斜めに掛ける部材』があることが大きな要因です。
でも、この『互い違い階段』は、部材どおしが斜めに接合することはありません。すべて直角です。
その点、施工は比較的楽でした。
成功の秘訣は、ひとえに最初の設計をきちんとしておくことです。 右足用と左足用が複雑に交差するので、寸法を間違えないようにきっちり加工しないと、合わなくなるのです。
踏み板の高さごとに受け材を取付ける
これが互い違い階段を取付ける場所です。
かつてはここに梯子があったのですが取り払い、新たに、互い違い階段の踏み板が乗る高さそれぞれに、受けとなる下地を取り付けました。 写真は、受け材を取付けた状態です。
踏み板と縦板を切り出し、接合のための加工をする
材料はメルクシパイン集成材を使いました。
通称『フリー板』などと呼ばれる、主にカウンターなどの材料になるものです。これを建材店から2枚購入。
1枚1万2千円くらいなので2枚で2万4千円程度。この階段の材料費のほとんどを占めます。
1枚の寸法は、長さ4.2m、巾50cm、厚さ36mm。 今回、36mmを買いましたが、30mmでもOKだと思います。
これを、それぞれの踏み板・縦板ごとの寸法にカットしていきます。
踏み板と縦板の接合はビスケットジョイントとポケットホールジョイントの複合にしました。
ビスケットがあることにより、組立ての際、接合場所が動いてしまうことがなく安心です。
画像はジョイントカッターでビスケット加工をしているところ。
こちらはポケットホールジョイントの穴加工をしているところ。
こんな感じで部材が出来上がります。これは縦板。
大入れの溝は、踏み板との接合部です。
踏み板は単に突き付けしてビス留めするだけでは人間の体重を支えるには弱いので、溝を切って挿し込むのが安心。
また、右足用と左足用は3cmほど重なり合わせることにしたので(そのほうが歩きやすい)、左右の部材が交差するところにも、深さ3cmの欠き込みをします。
ビスケット(ブナの圧縮材)を入れ、接着剤を塗り、接合する直前の状態。
踏み板と縦板を接合しつつ現場に取付ける
最初の部材を現場に設置しました。 これは右足用。
内側に設けたポケットホールからビスを打って固定します。
ビスケットがあるため、位置がズレることはありません。
床のフローリングにも、ポケットホールからビス打ち固定。
縦板と踏み板は、このように接合されます。 ( この画像は縦板を寝せているので、実際は90度回転される。)
縦板側からビスを打って固定します。 ボンド併用です。
同じようにして、どんどん部材を組み立てていきます。 この状態で、右足用がほぼ完成!
次に左足用をセッティング。
右足用の縦板と左足用の踏み板(および、その逆)が交差するので、ここが3cmほど重なり合うようにしています。
あらかじめ、部材に欠き込みしておくのです。
※ べつに重なり合わなくても問題ないけど、重なっていたほうが歩きやすいです。
一番施工に頭を悩ました場所がココ。 左足用の一番下です。
まずは溝底にボンドを塗り・・
先に踏み板をはめ込みます。 この踏み板だけは、底面に溝が切ってあります。
側面板、ここでは厚さ18mmのパイン集成材を使いました。 これを縦板に切っておいた溝にはめ込み。
床に接するパーツを、スライドさせながら挿入。 もちろんこのパーツにも溝があります。
木口にはビスケット。
最後に縦板を取り付け。
ここは一番下なので、内側からポケットホール&ビス打ちの手法が使えません。
ここでのビスうちはオーソドックスにダボ穴&ダボ穴埋めでやります。
本体部分がほぼ完成!
隙間があいている部分が多いので、これらはすべて収納スペースとして利用できます。
一番大きなスペースは、引き出しを作る予定です。 さらに、手すりも取り付けました。
⇒ ビスケットジョイントのやり方
⇒ ポケットホールジョイントについて
⇒ ダボ穴のあけ方、綺麗な埋め方
⇒ 手すりの取り付け
早速ネコの遊び場 (^^)
もう老齢ネコなので(このとき20歳)、飛び降りてケガしないよう、手作り網戸を取り付けて、降りられないようにしました。
デッドスペースは収納(引き出し)にする
氏家誠悟(seigo uziie)
2004年からこのサイトを運営している個人です。自分で家2棟、小屋2棟をセルフビルドしました。「自分でわが家を作る本。」の著者です。
元岩手県の技術系職員(森林土木・木材関係)
第二種電気工事士、DIYアドバイザー、林業改良指導員及びバックホー等の重機運転資格が有ります。
自分で住処を作れるようになろう!
DIYで本格的な木造建物を作る方法を、動画で詳しく解説したDVDです。 私の作品です。
ご自分で家を建てるために、きっとお役にたつと思います。