自分で木造建物を設計する手順
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3 屋根の形と勾配を決める
平面的な配置が決まったところで、次に屋根を決めましょう。
(1) 屋根の形
屋根の形は建物のイメージを決定づけるとっても大事なものです。
代表的な屋根の形として、次の3種類があります。
今回は、最も一般的でセルフビルドでも作りやすくてカッコイイ 切妻を採用しましょう。
(2) 水を流す方向
屋根の水を流す方向をどうするか?
次の2つのパターンがありますね。
Aパターンは南北に水を流す。
Bパターンは東西に水を流す。
・・・という違いだけなんですが、この例の家は東西方向に長く、南面が広いつくりなので、AパターンとBパターンでは、外見のイメージがだいぶ変わってきますね。
Bパターンだと南面の壁が大きくなり、壁の上部にも窓を設けると明るく開放的な家になると思いますが、壁の面積が大きいので南北からの風圧力を強く受けることになります。
Aパターンはこじんまりした感じですね。
どっちを採用するかで、後で出てきますが梁や母屋の掛け方がかわってきます。
さて、ここでは管理人の好みでBパターンを採用してみます。南面が大きいほうがいいですものね。
(3) 屋根の勾配
勾配(こうばい)とは傾きを表す言葉です。傾きを表すには角度でもよさそうなもんですが、木造建築では角度はほとんど使いません。
勾配で表したほうが作るときにとても具合がいいのです。
勾配は、水平方向に10の距離を行ったときに垂直方向にいくら上がるか(下がるか)で表現します。
つまり「10分の4」(=4寸勾配という)とか、「10分の3」(=3寸勾配という)とかいう感じです。
上の図のBパターンで屋根をかけるとして、勾配によってどういうイメージになるか、3つの例をご覧下さい。
上の図で、10分の10勾配は水平方向に10行ったとき垂直方向にも10上がるので、頂点は90度つまり直角になります。こういう勾配を矩勾配(かねこうばい)といいます。
さて3つの例を見て、どれがカッコイイでしょう?
私の個人的な好みは矩勾配のような急勾配屋根がカッコイイと思いますが、実際に作るとなるとカッコ良さだけで決めるわけにはいかなくて、施工性や材料費、使用する屋根材料とのマッチング、屋根裏空間をどう利用するか・・・なども含めて考えます。
施工性からいえば、屋根の上で足場なしで立って歩けるのは5寸勾配くらいが限度です。
それ以上急勾配になると、屋根の上に足場を組まなければならず、それだけ時間も経費も危険度も増大しますよ~~
今回の例では、足場なしで屋根の施行をすることを前提に、10分の5勾配(5寸勾配)を採用しましょう。
4 基本線の寸法を決める
木造軸組みの家には設計の基本となる線、つまり基本線があります。
基本線はとっても単純明快で、次のようなものです。
土台の上端(うわば=上の面)、柱の芯、垂木(たるき)の下端(したば=下の面)、そして垂木下端と柱芯の交点を結んだ水平線=峠墨から構成されています。
2階建ての場合は、土台上端と峠墨の間に胴差上端の線が入りますが、今回は話を単純にして平屋建ての家を例にします。

製材した木材といえども、一本一本は多かれ少なかれ微妙に曲がりがあるものなのですが、そういう材料を使って加工しても、全体を組み上げたときには全く歪みのない建物が出来る・・・・・その秘密は、これらの基本線を基準にして墨付けしているからなのです。
関連ページ ⇒ 墨付けの大原則
では今回の例に使う家の基本線に寸法を入れてみます。
屋根のかけかたは東西に水を流すパターンに決めたので、基本線の絵は南側から見た図と考えればいいわけです。
- 土台上端と峠墨の長さ
これは4間と決めているので、4間=1820×4=7280ミリ となります。
- 柱芯の長さ
いくらにしてもいいのですが、柱材として出回っている材料は長さ3メートルなので、 上下のホゾに100ミリづつ使ったとして、さらに床から天井までの高さを2400ミリ程度と仮定すると、今回は2700ミリにしておきましょう。
- 垂木下端
これは長さについてはたいして問題ではなく、勾配が重要です。勾配は5寸勾配つまり10分の5に決めたので、 峠墨からてっぺんまでの高さは 7280/2 × 0.5 = 1820ミリとなります。
基本線を基準にして材料を加工すれば、狂いのない建物が出来ますヨ。
では次に、梁(はり)や桁(けた)の乗せかたを決めて、軸組み図を描いてみましょう。
次へ ⇒ 軸組を考える
氏家誠悟(seigo uziie)
2004年からこのサイトを運営している個人です。自分で家2棟、小屋2棟をセルフビルドしました。「自分でわが家を作る本。」の著者です。

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