DIY 日曜大工で家をつくる

椅子の修理

「ほぞ」が緩んでぐらつきが出るようになった椅子を、クサビを用いた地獄ほぞの技法を使って修理します。

接合部が緩んだ、修理前の椅子


さて今回は人様からお預かりしたダイニングチェアを修理します。
接合部がユルユルになり、ぐらつくようになってしまった椅子を直すのです。

椅子で一番壊れやすい箇所は、後脚と幕板の接合部分。 ここは一番力が掛かりやすいので、接合にはしっかりとした「ほぞ組み」を用いるのが普通なんだけど、それでもやはり長年使用していると不具合が出やすいんですね~


壊れている箇所をアップで見ると・・・

ほぞが一部見えている、後脚と幕板の接合部

すでに後脚と幕板、後脚と貫(ぬき)のそれぞれ接合部のほぞが抜けてきているので、ここを直しましょう

バラして現状を調べる


まず、緩んでしまった接合部をバラします。

幕板と貫のほぞの状態

幸い、ほぞの横からの釘などは打たれていないので素直にバラけました。

中途半端に壊れているより、部品を完全にバラすことが出来る程度に壊れている方が直しやすいですからね。

後脚のほぞ穴の状態

後脚にあるほぞ穴はこんな感じ。
貫のほぞ穴は完全にまん丸で、幕板のほぞ穴は角ばった長方形ではなく、端部が丸くなっています。
多分、量産家具工場で、角鑿ではなくルーターだけで掘られたほぞ穴じゃないかな。


さて、「ほぞ」と「ほぞ穴」の現状のサイズがどうなっているか調べてみると・・・

幕板のほぞの長径をノギスで計測

幕板のほぞの長径は55mmでした。

それに対して、ほぞ穴の長径はというと・・・

後脚のほぞ穴の長径をノギスで計測

56.6mmもある!

ということは、「ほぞ穴」のほうが「ほぞ」よりも1.6mmもサイズが大きいということで、まさにガバガバの状態。

長年の使用中に揺すられたり、温度湿度の変化で木が収縮したりを繰り返し、どうしてもこうなっちゃうんでしょう。


短径はというと・・・

後脚のほぞ穴の短径をノギスで計測

ほぞ穴の短径は10.2mm

幕板ほぞに仕込まれていた鉄のクサビ

ほぞの短径は約10mmだけど、中央の溝に鉄のクサビが打ち込んであって、ほぞを挿入するとクサビの効果でほぞの短径が広がるようになってました。

これによって、ほぞとほぞ穴の木材の接合面がしっかりと密着し、接着剤の効果が十分に発揮される仕組みです。

丸棒で作られた「貫(ぬき)」のほうも、ほぞ穴の直径がほぞの直径よりも0.1mm大きくなっていました。 ややガバガバの状態でした。


さて、現状調査は以上として、、どのように直すか方針を決めます。

ほぞ組みの直し方


「ほぞ」というのは普通、「ほぞ穴」より1mm以上もサイズが小さいなんてことは無いわけです。

もちろん使用目的や木の硬さなどの条件によっても千差万別なんだけど、特に今回のような、椅子の構造を支える大事な接合部分では、「ほぞ」のサイズは、少なくと長径については「ほぞ穴」と全く同じかやや大きいくらいが丁度良いです。

現状はそうなっていないので、
どのように直すかとなると、次の2通りの方法があります。

  1. ほぞに木片を継ぎ足し、サイズを大きくする
  2. 「地獄ほぞ」にする

■ 方法1、ほぞに木片を継ぎ足し、サイズを大きくする

ほぞの長径を増やすため木片をくっつけてしまう方法。

とはいっても、厚さわずか1~2mmの木片を用意するのも大変なので、現状のほぞを一部欠き取り、欠き取った寸法よりやや大きい木片を接着するのが現実的でしょう。

でも今回の事例では、ほぞ穴の端部が丸くなっているためそれに合わせる加工が面倒なことや、ほぞの中央に溝が切ってあって木片の接着が難しいことなどから、この方法は見合わせ。

■ 方法2、「地獄ほぞ」にする

ほぞに2本の溝を切り、クサビを少しだけ差し込んだ状態でほぞ穴に挿入することで、ほぞが奥に入るに従って広がり、しっかり密着されて抜けなくなるという技法です。

図解するとこんな感じ ↓↓

地獄枘を挿し込む前の♂木♀木それぞれの断面図

この状態でほぞをほぞ穴に挿し込み、叩き込んでいくとどうなるでしょう?

ほぞが全部入り切るずっと前から、クサビの根元はほぞ穴の奥の壁にぶつかります。

地獄枘が最後まで挿し込まれたときの断面図

そのまま叩き込まれるに従い、クサビはどんどん食い込んでいき、結果、ほぞの先端が広がって『蟻』形状になります。

最後には下のイラストのようになり、もう二度と抜けないほぞとなります。地獄ほぞっていう名前もいいですね~(^^)

今回はこの技法を使って直すことにします!

実際に修理してみよう (^o^)┘

1、クサビを作る


クサビを作る前に、ほぞとほぞ穴の深さ関係を確かめてみます。 ほぞ穴の深さを測ってみると・・・

後脚のほぞ穴の深さを直尺で計測

ほぞ穴の深さは26.5mmでした。


それに対して、ほぞの寸法は・・・

幕板のほぞの高さを直尺で計測

ほぞ自体の高さは23mm。 鉄クサビの先端までが26.5mm。

さて、この結果を踏まえてクサビを作ります。

クサビが短すぎたり細すぎると効きが悪くなるし、かといって長過ぎたり太すぎたりすると、ほぞを差し込んでも途中で止まってしまい、失敗に終わります。
しかも、地獄ほぞは一旦挿入すると抜くのが難しいため、基本的に一発勝負。(・・;)

クサビの寸法は非常に重要なんだけど、特に法則とか計算式があるわけでもなく、木材の硬さ加減でも違うため「カン」が勝負です。(^_^;


クサビの材料は硬いのが良いです。
丁度、ケヤキの端材はあったのでそれで作ります。

ケヤキの端材からクサビを切り出す

鋸でもいいけど、バンドソーを使うとこういう作業はサクサク便利に進みますよ~♪

クサビの巾をノギスで計測

材料のケヤキは厚さ11mmだったので、クサビの形にカットしてからベルトサンダーで9.5mmに削りました。
ほぞの厚さが10mmなので、それよりほんのわずか小さくということです。

完成したクサビ

長さは25mm程度、厚さは?・・・まあ、カンです。(^_^;

クサビは各「ほぞ」にそれぞれ2枚ずつなので、全部で8枚必要。(幕板2本、貫2本)

2、ほぞ穴を整える

鑿でほぞ穴の奥を少し掘り広げる

「地獄ほぞ」は、ほぞ穴の奥が広がった形状で使う技法なんだけど、今回のほぞ穴は端部が丸いので鑿で奥を広げるのが難しいです。
※ 広るだけなら簡単だが、ほぞと同じ形状に丸く削らないと密着が悪く、効きが弱くなる。

そのため3分鑿と1分鑿を使い、一方だけ申し訳程度に広げるだけにしときました。それを見込んでクサビを細目に作ってます。
普通のほぞ穴と大きく変わりませんが、それでもクサビの威力で、強烈に効いてくれるはず。

3、ほぞにクサビ道の切り込みを入れる

鋸で幕板にクサビ道の切り込みを入れる

鋸を使って切り込みを入れるんですが、入れる位置は、ほぞの端から3~5mm程度が良いでしょう。 両端ともに入れるので、ほぞ一つにつき切り込みは2か所です。

クサビを入れたときにうまく開いてもらうためには、端からの距離が短いほど良いわけですが、かといってあまり薄すぎては、鋸入れを失敗したり木片が取れてしまう失敗のリスクが高いので、このくらいが丁度良いのです。

鋸で貫の丸棒にクサビ道の切り込みを入れる

丸棒の貫にもクサビを入れるので、同様に2か所の切り込みを・・・

この場合も、クサビを入れて開いたときに後脚の木材繊維の軸方向を締め付けるような向きにします。
もし角度を90度間違えてしまうと、木材の性質上、多分クサビの力で後脚が割れます。
(;゜д゜)


ちなみにこのときの丸棒(貫)はグラグラして安定しないので、左手で押さえながら右手で鋸を引いたんですが、本来、鋸の刃の方向に手を置くのはNG。
万一手元が狂って鋸が暴走しまうと、左手を怪我してしまうからです。

そのため、鋸が暴走して手に当たっても怪我しないよう、牛革の手袋をしています。

クサビ道の切り込みがすべて入った状態

こんな感じに切り込みを入れました。

4、椅子を組み立てる

さて、いよいよ組み立てますよ。

ほぞ穴の中に接着剤を塗布

ほぞ穴の中に接着剤をたっぷり塗って・・・


次に、鋸で入れた切り込みにクサビの先端をちょっとだけ差し込んだ状態で、ほぞを挿入していきます。

うっかりして、この時の写真を撮り忘れました。(^^ゞ
下のイラストのようなイメージです。

地獄ほぞによる接合部の修理の模式図

最初からクサビを奥まで差し込んでしまうと、ほぞの長径が広がってしまい、ほぞ穴に入りません。
だから先端をちょっとだけ差した状態で入れるのです。

手でグイグイと押していきますが、当然、手の力だけでは途中までしか入りません。

椅子を再度組み立てる。 まずは手で部材を接合

何度かドンドンと叩いてこのくらい入りました。

あとはクランプを使って圧締します。

クランプで圧締する

ポニークランプを4本使い、それぞれの幕板と貫に平行に掛けて締め付けました。

ネジを回すとギリッ、ギリッ・・・と音をたてて「ほぞ」が入っていきます。 中でクサビが刺さってギッチリと密着しているのでしょう。

この状態で2時間以上放置し、クランプを外した後さらに24時間放置。
これで修理が完成しました。

かなり頑丈になって蘇った気がします。(^^)v


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